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稲城市3月市議会一般質問報告2~教員の働き過ぎ改善~ [市議会]

一般質問の報告の2回目は、「学校の教員の働き過ぎの改善」についてです。
今回の質問のメインとして一番力を入れた内容です。少し長文になりましたが、報告します。

3.学校をよりよい教育の場にするための、教職員の働き過ぎの改善について
(1)教職員の働く実態について
①過去5年間における病気による休職者数を聞きます。
→2014年~2018年の5年間の休職者数は15人です。そのうち、精神疾患による休職者数は14人です。
②市内の小中学校における教員の勤務時間や勤務実態の調査状況について聞きます。
→2017年に東京都教育委員会が「公立学校教員勤務実態調査」を実施しました。稲城市内では小学校1校が対象となり、直接学校に調査票が送られて回収されているために稲城市の状況については分かりません。
→市独自の調査については実施していません。
③教員の長時間労働と多忙化の現状について認識を聞きます。
→校長会からの聞き取りや学校訪問等により現状の把握に努めており、教員の長時間労働や多忙感はあるものと認識しています。
→長時間労働によって教員が疲弊することで教育活動に支障が生じることがあり、長時間労働の改善の必要があるものと認識しています。

<解説>
「学校がブラック職場になっている」と言われ、教職員の長時間労働は社会問題になっています。ひとりひとりの子どもたちが大切にされ、成長していく学校をつくるためにも、教職員の異常な長時間労働の是正はすぐにでも行わないとならいという立場で質問しました。
 5年間の休職者15人中14人が精神疾患による休職だということです。驚くべき割合です。ケガや病気などではなく、ほぼ全員が心の病によって休職を余儀なくされています。文部科学省の調査では全国の公立教職員の精神疾患による休職者数は1989年の1037人から、2015年は5009人と5倍に膨れ上がっています。同じ状況が稲城にもあるということです。
 その中で、市は「教員の長時間労働はある」「長時間労働によって教育活動に支障が生じる」という答えがされました。これは大変重要な答弁ではないでしょうか。まさに、5年間で14人の教員が精神疾患で休職を余儀なくされたことの一因も長時間労働にあったのではないでしょうか。そして、長時間労働は当然改善されなければならないという事です。それではどのようにして長時間労働を改善すべきなのか、ということになります。

(2)持ち時間数の上限を定め、教員の定数を改善することについて
①学習指導要領で定めている年間の標準授業時数と週当たりの時間(コマ)数について、小中学校の学年毎に聞きます。
→表の通りです。
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→授業時間と準備時間の関係については、一日の勤務時間の半分程度を授業時間に充てて、残りの半分程度を授業準備などの校務に充てるという原則は今も変わっていません。
→余剰時間については、標準授業時数を上回って設定している時間です。小学校は年間35時間程度、中学校は年間20時間程度、計画するように指示しています。
②質の高い教育を保障するためには、1日あたりの持ち時間(コマ)数は4コマが適切ではないかと考えるが認識を聞きます。
→教員が受け持つ1日当たりの授業時数については、指導の充実を図るために教員が事前に授業準備を行うことは大切だと認識しています。学習効果や学校運営等の影響を鑑みますと、すべての学校のすべての教員について1日当り上限4コマが適切であるかどうかを判断することは困難です。

<解説>
 私たち日本共産党は、2018年11月に「教職員を増やし、異常な長時間労働の是正を-学校をよりよい教育の場に」という提言を発表しました。
 その中で、この長時間労働を生み出した3つの根本問題があると述べています。その1つが、教員の授業負担です。教員としての本分であり、最も力を入れなくてはならない授業について、あまりにも負担が重くなりすぎて、それが長時間労働を生み出しているという事です。
 国が設定している標準的な授業時間では、小学校高学年から中学校については概ね週29コマの授業を受け持つことになっています。月曜から金曜までの5日間で割ると一日5.8、ほぼ毎日5コマから6コマの授業を受け持つことになります。例えば小学校では6コマの授業を行い、法律で定められた休息時間を45分間を間に取ったら、1日勤務時間8時間のうち残りの時間は25分しかありません。この25分間で授業準備、テストの採点、各種打ち合わせ、報告書づくり、生徒対応などの校務が終わるはずなど絶対になく、結果として残業が前提の時間配分となっています。
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 しかし、国は教員の定数を決める原則として1日の半分が授業時間になり、残りの半分が授業準備などの校務時間に充てるものと考えられてきました。そして、それは今も変わらないということです。ちゃんとした授業を行い、本当に子どもたちの事を考えた教育をしようとするのなら、授業時間と同じくらいの準備時間が必要だという事は、国もそうだと認めているわけです。それではなぜ週29コマ、1日6コマなんて授業時間が標準になっているのか。しかも、その標準にさらに上乗せがされるようになっているというのです。
 日本共産党は、授業準備の時間をしっかりと取るためには一日当り「上限4コマ」が適切であると提言で述べています。この一日4コマというのは、私たちが勝手に言っているものではありません。教員の定数を決める義務標準法が作成された1950年代後半に、この法律作成の中心となった文部省の官僚がこういった説明をしています。
「教員の定数を何を基準に決めたのか」「1教員あたりの標準指導時数との関係でおさえることにした」「1教員当たりの標準指導時数は1週24時限、1日平均4時限を標準とした」「1日の勤務時間8時間のうち、4時間を授業時間にあて、残りの4時間を教科外指導や指導準備やその他校務一般に充当するという考え方」で教員の定数を決めたというのです。
 市の答弁でも授業時間と準備時間の1対1の原則は変わらないということでした。そうであるならば、1日の労働時間は8時間なのだから4時間が授業に、4時間が準備などの時間に充てていくのが当然の考え方になるのではないでしょうか。しかし、それがされていない。ESD、英語教育、特別支援教育、プログラミング、やるべきことは増えていくのに、それの質を担保するための充分な準備時間がまるで考慮をされていません。ここにまず、長時間労働の大きな原因があるのではないでしょうか。
 ちゃんと授業の準備をして、子どもたちに向き合った教育をするためには一日当たり4コマの授業時間が限度です。そうするのなら、今の教員の人数では到底足りません。教員の数を抜本的に増やして、一人あたりの負担を軽くしていくしか道はありません。私たち日本共産党は、小中学校の教員定数を10年間で9万人増やすことを提言しています。先進国の中でも最下位になっている教育予算をGDP比率で0.1ポイント引き上げるだけで実現できます。定員増は国の課題ですが、長時間労働の根本には教員の数が足りていないんだということについて、教育委員会としてもしっかり認識すべきであると求めました。
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(3)不要不急な業務削減の推進について
①小中学校の教員を対象に1年間で実施される主な行政研修や研究授業の種類や数について聞きます。
→1年次(初任者)教員研修を年間180時間以上実施することとなっています。中堅教諭等資質向上研修は半日を1単位として14単位から22単位実施しています。その他に、人権教育研修が年1回、ESD・オリンピック教育研修が年1回、稲城市立学校教育研究会が全体発表会を含めて年間9回等の研修を実施しています。
→研修の回数や時間の見直しについては、教員の資質や能力の向上のために必要な研修であると考えており、現在も必要な研修を必要な回数に限って実施しているところです。今後の研修の在り方については、他市の情報等を収集しながら、研修計画や方法等について研究する必要があると認識しています。
②部活動の負担軽減について認識を聞きます。
→平成30年10月に部活動における休養日と活動時間の基準を示す「稲城市立中学校部活動に係る方針」を改正し、市内中学校に周知しています。
③現場の教職員同士の話し合いにより不要不急の業務削減を進めるべきと考えるが認識を聞きます。
→各学校が、自校の校務等の実態を踏まえ、教職員がチームとして校務の改善を進めることは必要なことだと認識しています。

<解説>
 2つめの長時間労働の原因として考えられるのは、教員の業務の増大です。不登校の増加、いじめ問題などで学校のかかえる課題は増える一方です。貧困と格差が広がるもとで家庭や保護者とのかかわりも複雑さを増しています。さらにそこに上乗せされるように全国学力テストや自治体独自の学力テスト、行政研修、教員免許更新制、人事評価に学校評価など様々な施策が学校に覆いかぶさり、それらがすべて現場の教員に背負わされているのではないでしょか。学校の業務そのものを減らしていくことが求められます。
 1年目の教員研修は年間180時間ということです。標準である年間35週でわると、週5時間です。毎日1時間は研修に費やさなくてはなりません。小学校高学年や中学校で一日6コマとか授業を持ったら、自由になる時間は30分もありません。その時間を超える研修時間が課せられています。すでに残業することが前提の時間の組み方になっています。
 中堅研修だって、半日をまるまる使う研修が最低2週間、最大で3週間以上です。さらに、諸々の研修が年に11回です。ほぼ毎月1回は半日以上時間を使うことになりますが、その分の時間はどこかで補てんされるのでしょうか。半日研修を受けて、その日にやるべきだったテストの採点や授業準備はどこでやるのでしょうか。
 もうこれは見直していく必要があるのではないでしょうか。国の制度として位置付けられている研修もあるかもしれませんが、市教育委員会として実施しているものもあります。1つ研修を増やすのなら、1つ減らす。そもそもの数を減らしていく。そういった対応が求められるのではないでしょうか。こういった市教育委員会が主催する研修の回数や時間については思い切って整理するなど、教員の負担軽減のために検討していくことを求めました。
 そして重要なことは、実際に教育現場で起きていることは教育現場にいる人たちに話しを聞かなければ解決はしない、ということです。上位下達で、「決まったからこれをやれ」ということではなく、ちゃんと話し合って現場の教員の声を聞くということが求められているのではないでしょうか。現場の裁量を認め、学校の、教室の中の自由度をあげていく。教員が子どもたちと向き合い、良い授業を行い、子どもたちが自らの可能性を伸ばしていけるような学校にしていく。そのための声をしっかりと集めていくことが求められるのではないでしょうか。

(4)働くルールの確立と待遇改善について
①教員の残業時間の上限を厚生労働大臣告示「週 15 時間、月 45 時間、年 360 時間以内」に規制すべきと考えるが認識を聞きます。
→教員の残業時間月45時間、年360時間を上限の目安とする文部科学省の指針を参考に、「稲城市公立学校における働き方改革に関する実施計画」を策定していく中で対応を検討していきます。
→実施計画の作成について、現在は検討会を設置して、小中学校における働き方改革の目標、取組の方向性及び実践などについて検討しているところです。作成にあたっては教員の勤務実態把握や学校の実態に応じた取組を検討するために学校管理職をはじめ学校と意見交換などを行う場を設けながら進めていきます。策定時期は、2019年度のできるだけ早い時期に教育委員会で決定していきたいと考えています。
→中教審の答申のひとつである多忙な時期に勤務時間を延ばす代わりに夏休み期間などに休みを増やす「変形労働制」については、働き方改革を進めるうえでの選択肢のひとつであると考えられます。今後文部科学省から具体策が示されると思われるので、動向を注視しながら、学校の実態を踏まえた対応について研究していきます。
②教員の勤務時間を把握する仕組みを導入すべきと考えるが認識を聞きます。
→出退勤管理についてはタイムレコーダーを導入することなどにより把握することは可能であると考えています。まずは、業務の切り分けにより学校内で教員ひとりひとりの勤務時間を正確に把握する組織体制を構築する必要があります。今後、働き方改革に関する実施計画の策定を進める中で研究していきます。また、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」なども参考にしていきたいと考えています。
③小中学校での非正規の教員や職員の種類と人数について聞きます。
→時間講師が75人、非常勤教員が9人、スクールカウンセラーが18人、特別支援教室専門員が12人、学校図書活性化推進員が18人、教員補助が25人、他に72人の非正規職員がいます。
→期限付き任用教員は、任期が1年以内であることを除いて正規教員と基本的に違いはありませんが、育児休業・育児短時間勤務・病休取得による給与減額免除などは適用されません。現在、小学校に6人、中学校に7人おり、そのうち学級担任は小学校は2人、中学校は3人です。

<解説>
 3つ目の長時間労働の原因は、そもそも働くルールが全く守られていないということです。公立学校の教員は法律で例外的に「残業代ゼロ」とされてきました。その結果、どの先生が何時間残業したのかまったく分からない状況が続き、長時間労働が野放しになりました。実態が分からないし、改善のための基準すらあいまいにされてきました。教員の働くルールの確立をする事も重要な課題です。
 今後、市は「教員の働き方改革の実施計画」を作るという事です。まず「実施計画」の前段として、現状を正確に把握するために市独自の勤務実態調査が必要であると求めました。
 中教審が1月に発表した「働き方改革」答申の中では、長時間労働の改善策として1年単位の変形労働制の導入について提言をしています。日常の勤務時間を8時間労働から9時間労働に延長して、延長した1時間分を貯めて夏休みなどでまとめて休日にするという内容です。そして、それとセットで、超過勤務時間を一時的に最大月100時間未満まで認めるというものです。実態は何も変わっていないのに、見かけ上だけ残業時間を減らすという、ごまかしと偽装以外のなにものでもない中身です。今後作られる「実施計画」の中に、この中教審で提言された変形労働制については導入すべきではないと求めましたが、市は「選択肢のひとつ」と答弁しました。この変形労働制を導入させない事は、今後の議論の大きな課題です。
 そもそもの勤務時間の把握も重要です。2020年4月に改正労働安全衛生法が施行されます。その中では「事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」と、労働時間の把握が「法律上の強い義務」となります。当然、2020年4月には勤務時間把握の仕組みが導入されるべきであると対応を求めました。
 そして、学校における非正規の教員の在り方です。特に驚いたのが、「期限付き任用教員」と呼ばれる教員です。非常勤ではなくて正規教員なんだけど1年しか任期がなくてその先は保障されていない。労働条件は正規とは違いはないんだけど、育休も時短勤務も病休による給与保証も認められていない。まさしく不安定雇用そのもののはずなのに、非正規とはみなされていません。来年はどうなるか分からないのに、担任として子どもたちの成長に責任を持つことになっている。そういう働き方の人が、今の学校は普通に居るということなんです。
 私の子どもが通う学校にも期限付き任用の先生が担任をされています。若い先生で、毎日朝早く学校に来て、熱心に教えられていて、子どもたちの評判もいい。それなのに、この先生が来年は先生を続けているのかどうかすら保証がされていません。期限付き任用教員だけではありません。教員を支えるための専門職が増えていますが、そういった人たちの多くが非正規雇用です。スクールカウンセラー、学校図書活性化推進委員、事務職員、そういった非正規雇用の人たちの正規化をすすめ、待遇を改善していくことも求められるのではないでしょうか。

(5)教育委員会と教員の信頼関係の構築について
①教員の多忙化を解消して学校をよりよい教育の場にするためには、教育委員会と教員による信頼関係の構築が重要と考えます、教育長の認識を聞きます。
→教育委員会では、学校訪問をはじめ、年度当初訪問、公聴会などを通じて、学校の教員の状況把握に努め、必要に応じて意見交換などを行い信頼関係の構築に努めています。今後も教員の多忙感の軽減などにより教員が児童・生徒と向き合う時間を確保し、学校教育の質の向上を図るために学校と一体となって取り組んでいきます。
→多忙感を軽減し、教育の質の向上を図るうえで、教員の長時間労働を改善することは大切なことと考えています。また、教育委員会がすべての教員ひとりひとりの意見を直接聞く事は困難と考えていますが、学校訪問などの機会をとらえ、必要に応じて意見交換などを行っていきます。
<解説>
 教員は労働者であるとともに、教育の専門家です。教員の専門性が発揮されるためには、それにふさわしい労働条件と環境が必要です。授業の準備、子どもへの理解や対応、専門性をより高めるための学問研究。人として成長していくための余暇や家族との触れ合い。こういったまさしく人間らしい生活が保障されなくてはならないのではないでしょうか。
 そして、教育者として自主性や自律性、自由も必要です。上から決まった物を下に流していくというものではなく、現場の中から、多くの悩んでいる教員の中から解決策が生まれて、それを教育委員会が吸い上げて実現させていく。そういった取り組みが求められるのではないでしょうか。
 なによりも良い教育を実践し、稲城の子どもたちひとりひとりが大切にされる学校の実現を求めて、これからも市民、保護者、学校の教員の声を市政へと届けていきたいと思います。

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日本共産党「教職員を増やし、異常な長時間労働の是正を―学校をよりよい教育の場に―」(本文のリンク先)


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