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稲城市議会12月議会一般質問報告3~学校の先生の働き方と学力テストの結果公表~ [市議会]

12月市議会の一般質問報告の2回目は、「学校の先生の長時間労働の改善」と「学力テストの結果公表」についてです。

3.小中学校教職員の長時間労働の改善について
(1)「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」について
①ガイドラインの「趣旨」で述べられている内容について聞きます。
→「学校における働き方改革の総合的な方策の一環として制定するもの」です。
→現時点では、ガイドラインそのものについては法的な位置づけはありません。
②「勤務時間の上限目安」として示されている内容について聞きます。
→1ヶ月の在校等時間の超過分を45時間、1年間の在校等時間の超過分を360時間超えないようにすることです。
→「在校等時間」は教師が校内に在校している時間及び校外での勤務の時間を合算した時間で、「勤務時間」や「労働時間」との違いは使用者からの指示に基づかず、教師の自発的な判断により行った時間が含まれます。
③ガイドラインの「留意事項」で述べられている内容について聞きます。
→「ガイドラインの実施にあたっては、在校時間はタイムカード等により、できる限り客観的な方法により計測すること」「上限の目安時間の遵守を形式的に行うことが目的化し、真に必要な教育活動をおろそかにしないこと」等です。
④給特法対象外の学校職員への対応として示されている内容について聞きます。
→給特法の対象となっていない事務職員や学校栄養職員等については、36協定を締結することが求められています。
→対象となる職員は、小学校は都費事務職員12人、市費事務職員12人、用務員5人です。中学校は都費事務職員6人、市費事務職員6人、用務員2人です。
→36協定締結の段取りは、学校ごとに校長が対象となる職員全員に説明を行い、全職員の過半数の賛同を得た職員代表を選出し、校長と職員代表が協定を締結し、校長が監督官庁に協定届を提出します。
<解説>
 学校での教職員の長時間労働は依然として深刻です。過労による休職や過労死などを生み出さない学校を、現場の教職員の声と一緒に作り上げていく事を求める立場から質問しました。
「勤務時間の上限に関するガイドライン」は、今年の1月に文科省が出したガイドラインです。市が答弁した趣旨の前段では、「教師の長時間勤務の看過できない実態が明らかになっている。特に所定の勤務時間外においては、~中略~、教師が対応している時間が長時間化している実態が生じている」となっています。教員の長時間労働を是正するという立場から、このガイドラインが示されているということです。
 そして、ガイドラインでは月の残業時間を45時間、年間の残業時間を360時間を超えないような働き方にするべきだと述べられています。ただし、この月45時間以内というのは勤務時間や労働時間ではなく「在校等時間」となっています。地方公務員法上の勤務時間とも、労働基準法上の労働時間とも違う、「在校等時間」という概念が作り出されていて、教師が学校に居る時間および校外での業務時間をすべて合わせて月45時間以内にしなさいと言っています。
 ガイドラインのQ&Aでは、在校等時間について次のように説明しています。「教師に関しては、校務であったとしても、使用者からの指示に基づかず、所定の勤務時間外にいわゆる『超勤4項目』に該当するもの以外の業務を教師の自発的な判断により行った時間は、労働基準法上の『労働時間』に含まれないものと考える」が「在校等時間としてカウントしてよい」ということです。
 業務管理、残業管理の鉄則は、上司の指示命令に基づかない作業は業務として認めないというものです。ところが学校の先生に限っては、上司の指示がなくて自発的に行った業務というものが存在することを認めて、それがあることを前提に進めようとしています。ここが、学校の先生の働き方の深刻な実態のひとつの原因となっています。
 そして、給特法で労基法の一部対象外となっている先生以外の職員については、時間外労働をさせるためには使用者と労働者の間で36協定を結ばないといけないということです。そういった職員は都事務と市事務の職員の方と用務員の方で、すべての学校に1人以上は必ずいるとのことです。協定の提携のためには学校毎に職員代表を選出して、学校毎に協定書を交わす必要があるという事です。もれなく行おうとすると、それなりに大掛かりな作業になります。これを適切に進めていく事も求められます。

(2)稲城市での取り組みについて
①タイムカード等を使った時間管理の実施について認識を聞きます。
→タイムカードは出退勤時間を把握するには有効と考えていますが、勤務時間は在校時間と必ずしも一致しないことから、まずは業務の切り分けにより、学校内で教員一人ひとりの勤務時間を正確に把握する仕組みづくりが必要と考えています。今後、稲城市立学校における働き方改革に関する実施計画の策定を進める中で検討していきます。
②勤務時間の上限設定について認識を聞きます。
→勤務時間の上限設定については、現時点では法的な規制は無く、国のガイドラインはあくまでも目安であるため、市として上限を設定すべきではないと考えています。今後は国の法整備の状況を踏まえて対応していきます。
③36協定の締結状況について聞きます。
→今後、法の趣旨に基づいて適切に手続きを進めていきます。
<解説>
 市は勤務時間管理として、タイムカードをすぐに導入するとは言いませんでした。
 文科省は指示命令のある業務も支持命令のない作業もごちゃまぜにして、とりあえず在校時間として記録してその上限を決めなさいといっている。しかし、稲城市教育委員会の場合は、指示命令にある業務時間を正確に把握する仕組みが必要だと言っています。そして、それは単純なタイムカード記録だけということではない、という趣旨です。
 しかし、それではどうするのでしょうか。実態として、今の学校現場において指示命令に基づかない先生の自発的判断の名のもとに行われている、様々な校務が相当数存在をしています。現場では長い間の蓄積による相当な矛盾があります。それを一からすべて解決ができるのか、また解決できるまで手をつけないのか。この点については、先ずは一歩前に踏み出すべきではないでしょうか。先ずは「在校時間」だけでも正確に記録できるような状況をつくるべきだと考え、対応を求めました。
 また、市が行っている学校の先生の働き方改革に関する検討会については、基本の構成員が教育委員会の庁舎職員のみになっています。これについては学校の校長や副校長を基本構成員に加えるべきだと思いますし、現場の教師の声や意見を聞く機会を必ず持つべきであると対応を求めました。

(3)「1年単位の変形労働時間制」について
①「1年単位の変形労働時間制」の内容について聞きます。
→地方公務員は適用除外になっている「一年単位の変形労働時間制」について、対象者や対象期間、労働時間等を条例で定めることで、公立学校の教師に対して適用できるようにするものです。
②今年度の夏休み期間中の各学校の閉庁日の実施状況について聞きます。
→8月6日から8月16日の間に2日から5日の閉庁日を設定しました。
→閉庁日を設けた理由は、年次有給休暇等を取得しやすい環境を整えることです。
③「1年単位の変形労働時間制」では教員の長時間労働の改善にはならないと考えるが認識を聞きます。
→1年間の総労働時間の短縮が図られるなど、教員の働き方改革を推進するうえで一定の効果を国が見込んでいます。
→各学校における教職員の勤務時間の割り振りについては、教育委員会が校長へ権限を委任しており、各学校の校長が定めています。その際に、職員団体より交渉の申し入れを受けて場合は話し合う事になります。
→学校現場における勤務時間の割り振りについては、学校の実態を踏まえて定める必要がり、また教職員の働き方については、教職員がチームとして改善を進める必要があります。
<解説>
 残念ながら、国会では給特法改定に伴う「公立学校教員の1年単位の変形労働制」が法律として成立してしまいました。これは、1年間を繁忙期と閑散期に区別して、繁忙期は1日10時間労働まで可能にして、増やした分の労働時間を貯金して、その分を閑散期にまとめて休めるようにしようというものです。
 この変形労働制に対する論点はたくさんあります。
 そもそも余分に働いた時間を貯金して、2ヶ月先とか3ヶ月先のお休みに使うという考え方そのものがなりたつのか?
 閑散期、つまり夏休みの時期にまとめて休みを取るというけど、そもそも夏休み時期だからといってそんなにまとめて休めるのか?
 条例を定めるのはいいけれど、じゃあ自動的にそういった働き方をすべての学校に適用できるのか?
 課題は山積みです。
 例えば夏休み期間中の先生の働き方です。今年は各学校で5日間の閉庁日、完全に学校を閉めてしまう日を設けました。しかし、その理由は有給取得のためだということです。裏返せば、わざわざ5日間学校を閉めないと、有給もまともに取れない現状があるということではないでしょうか。
 変形労働制になって、もしさらに夏に休みを取らなくてはならなくなったらどうするのでしょうか。閉庁日を増やすのか?夏休みの前半はプール指導や1学期のまとめがあり、8月の後半になれば2学期の準備がある。そもそも、夏休み期間中だから先生は休みが取りやすいだろうとか、それこそ実態をわかっていない机上の空論そのものではないでしょうか。
 この変形労働制について、「国は一定の効果を見込んでいる」と答弁しましたが、市としての判断は示しませんでした。今回の法律改定のポイントの一つとなるのが、あくまでも「変形労働制が適用できる」ということになっただけで、やらなくてはならないとはなっていないことです。
 公立学校の先生は、地方公務員なので勤務時間や勤務条件は都道府県および政令市の条例で定めることになっています。東京都の「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」では、勤務時間は「休憩時間を除き、一週間について38時間45分とする」と決められています。変形労働制はこの概念を1年単位に広げて、1年間の総労働時間を定めて、それを月単位で割り振ることが可能にさせよう、というものです。では、勤務時間の割り振りはいった誰が行っているのでしょうか?
 市が答弁したように、実際に勤務時間の割り振りは、各学校の校長が行っています。そして、その勤務の割り振りについて、労働組合が交渉を申し入れたら話し合いをしなくてはならないとなっています。国会でも文科大臣の答弁で、「学校のみんなが嫌だというものを、条例ができたからといって動かすことはできない」と答弁しています。
 そういった意味でも、学校現場における勤務時間の割り振りや働き方については、実際に働く教員の同意と納得のもとに進められるべきです。法律が変わって「変形労働制ができる」となったとしても、実際に学校現場で実施させない取り組みがこれから求められるのではないでしょうか。
 こういった取り組みも含めて、学校の先生の働き方の改善について、これからも市議会で取り上げていきたいと思います。


4.子どもたちの可能性を伸ばすため学力向上について
(1)学力調査の実施状況について
①実施主体別の学力調査の実施状況について聞きます。
→以下の表の通りです。
120401.jpg
→学力調査により測定できるのは、学力の特定の一部分であり、学校における教育活動の一側面です。
(2)調査結果の活用方法
①結果の活用方法について聞きます。
→生徒一人一人に結果を還元し、個々の課題に応じた指導やアドバイスを行うとともに、各学校において調査結果の分析を行い、課題に応じた授業を改善するためのプランを作成して、指導方法の工夫・改善に活用しています。
→こういった工夫や改善は、テスト対策として行うものではありません。
②結果の公表方法について認識を聞きます。
→調査結果の公表方法は、学校ごとに学校だより等を用いて公表しています。調査結果の公表に際しては、学力調査の主旨をふまえて、教科ごとの平均正答数や平均正答率だけでなく、結果の分析や授業改善の方策も併せて示すことが大切であり、学校に対してそのように指導しています。
→学校の平均正答率を出して、全国や東京都の平均正答率と比べることについては、学校が学習状況や課題を客観的に把握して分析することが理由です。
→稲城市学力調査の結果については、市として各学校の結果を公開する予定はありません。
③学校現場を学力調査の点数向上のための競争に陥らせるべきではないと考えるが認識を聞きます。
→学力調査により学校間の序列化や過度な競争が生じることは、学力調査を実施する主旨ではないと認識しています。
→すべての学校の公表結果を集めれば平均正答率を並べ直すことも可能ですが、それは学力調査を実施する主旨ではないと認識しています。市として学校ごとの結果は公表していません。学校に対しては、序列化や過度な競争が生じないよう、教育上の効果や影響等を考慮して適切に公表するよう指導しています。
<解説>
 1学期に実施された学力調査の結果を基にしたランク付けや学力競争について、私は懸念をしています。一人一人の子どもたちが大切にされる教育の実現を求める立場から質問しました。
 現在、学力調査については小学5年生が東京都学力テスト、6年生が全国学力テスト、中学1年生が稲城市学力テスト、中学2年生が東京都学力テスト、中学3年生が全国学力テストと、毎年のように何らかの学力テストがあります。
 当然ながら、これらの学力調査で計られるのは「学力の特定の一部分」であり、「教育活動の一側面」でしかなく、この調査でその人のすべてが図られるものではないということです。
 そして、この学力調査の結果をひとりひとりの課題の解決と、課題に応じた授業改善のために使うという事です。しかし、そういった改善計画が結果として、学力調査の点数をあげるための「過去問練習」「プレテスト」「学力テストのための予習」などのテスト対策のようなものになるべきではないと思います。市としても、テスト対策ではなく、テストの点を上げることが目的ではないということです。
 そして現在、学校ごとに平均点を公表して、その分析や改善計画を公表しているということです。教員が自分で客観的に分析したり、学校が課題を把握したりするのは、ひとつの方策だと思います。しかし、その点数をわざわざ比較を付けて明らかにする意味が本当にあるのでしょうか。なんとなく好奇心的に「うちの学校は全国平均と比べてどうなのか?」と知りたくなる気持ちはわかります。けれど、それを知ったからといって、個々人の課題解決にどう結び付くのでしょうか。必要性について、疑問があります。
 市は序列化や過度な競争は、目的ではないということです。しかし、すべての学校の公表結果をあつめて、並べ直すと序列化することができてしまいます。そのことは、市も認めざるを得ませんでした。「国語は〇〇中より高いけど、英語は〇〇中に負けた」「〇〇中は全体として低目なんだ、やっぱりね」というようなことが、実際にはできてしまいます。このSNS時代です。いくらでも序列化しようと思えばできますし、私たちの目に触れていない所で、実際には行われている可能性だってあるのではないでしょうか。
120402.jpg
※ある学校の学校だよりから抜粋。一部加工しています。

 教育委員会としても、様々な方面からの要望やプレッシャーがあるのは一定理解できます。しかし、基本的な目的が序列化や点数競争ではないということならば、それに合わせた適切な対応を取っていくのが望ましいのではないでしょうか。私は、各学校で行われている点数の公表はきっぱりとやめるべきだと思います。必要なのは、子どもたち一人一人に結果に基づいた、適切な指導をすれば良い事です。単純な数字の上げ下げで、それこそ学校全体を評価するようなことはするべきでありません。教育委員会に対して再度の検討と対応を求めました。

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