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稲城市議会6月議会一般質問報告3~南山区画整理事業~ [市議会]

 一般質問の報告の最後は「南山区画整理事業」についてです。今回の質問の中でも最も時間をとって質問をしました。長文になってしまいましたが、市内の事業の中でも重要課題のひとつです。まずは実態を明らかにすることを目的に質問しました。

5.南山東部土地区画整理事業について
(1)区画整理事業の現状について
①事業の進捗率について聞きます。
→平成30年度末で使用収益開始面積ベースで約27.5%、稲城市の補助金ベースで約77.3%です。
→事業完了年度は2025年を予定しています。今年度の事業予定は地区の南西区域及び都道読売ランド線などの幹線道路の整備を中心に行う予定です。進捗率は使用収益開始面積ベースで約32.1%、稲城市の補助金ベースで約78.4%となる見込みです。
②事業計画変更の手順について聞きます。
→南山東部土地区画整理組合(以下、組合)が、稲城市および東京都と変更内容等についての協議・調整を行い、組合の総代会の議決を得たのち、市を経由して東京都都知事に事業計画の変更申請を行います。その後、縦覧の手続きを経て、都知事が計画変更に関する認可と公告をします。
→これまでの事業計画の変更回数は6回です。
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<解説>
 南山の開発について、事業計画の度重なる変更によって事業規模が当初計画の400億円よりも1.3倍の535億円にまで膨れあがり、市民から心配や懸念の声が寄せられています。際限のない膨張を許すのではなく、適正な事業運営のために市が役割を果たすことを求める立場から質問しました。
 2006年から始まった南山区画整理の事業完了は、2025年だということです。当初の予定では2021年頃には終わるといわれていたのが4年延長をされています。そして、2006年から2018年の12年の間に6回も計画が変更されています。第4回、第5回、現在の第6回の3回分の変更は毎年変更をしています。なぜ、ここまで頻繁に変更をしなくてはならないのか。そして、この変更は妥当な物なのか、適正な物なのか、それは誰がどのように判断をして、地権者や組合員だけではなく、市民や市民代表である議会に対してどのように説明がされたのか。こういった事が問われるのではないでしょうか。
 特に第5から現在の第6回の事業変更は、476億円だった事業規模を10%超の増額で535億円にまで規模を大きくしています。さらに、ここで市補助金も6億円の追加をしていて、本当に大規模な変更になっています。ところが、この内容についてどれだけの市民がその内容を知っているのでしょうか。ほとんど知られていないのではないでしょうか。
 区画整理計画は都市計画法に基づいて変更時には内容を縦覧することができます。しかし、時間も場所も大きく限定されてしまい十分に活用されているとは言い難い状況です。市議会にも毎年年度初めに事業の状況が報告されていますが、年度の途中で事業が変更されると変更後の資料だけがでてきて、具体的にどのように変更されたのかは、こちらが聞かなければ報告されません。そうではなく、本当に市民の理解を得ようと思うのなら、計画が大きく変更されたのならその都度市民の代表である市議会に報告をしたり、市民向けの説明会を行ったりと、別な方法を取ることもできるのではないでしょうか。
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※市議会に提出された唯一の南山区画整理の資料

(2)土地利用計画について
①公共用地について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→公園緑地の増えた分は、保留地分の土地を転用しています。
②宅地と保留地について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→保留地が減少している理由は、標準価格の見直しにより、保留地の平均単価が上昇したため、全体事業に必要な保留地の面積を少なくしました。
(3)支出について
①公共施設整備費「築造」部分について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
→電線共同溝整備路線の追加や都道読売ランド線トンネルの補助工法の追加、社会情勢の変化に伴う人件費、資機材費の高騰による事業費の増加が主な理由となっています。
→調整池については安全性の確保、将来的なメンテナンス費用も含めて事業費削減のために構造を変更しました。
②第2条第2項該当事業(上水道・下水道・防災施設等)費について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→上水道の事業費については地区内の配水方式の変更などによる減額となりました。ガス施設の事業費減については、各企業者との協議により負担額が減りました。
③整地費について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→整地費については、地盤改良の追加、高盛土関連対策費の追加、仮設防災対策費の増額などによるものです。
④支出全体について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→事業費の増加については、事業を具体的に進めていく中で、当初計画では想定しえなかったことに対する費用がその時々で発生し対応が必要となったものと考えています。

<解説>
 土地の利用計画と支出の増減は大きくリンクしています。公共用地については、公園緑地が増えています。当初計画では12万7千平米だったのが、現在では13万9千平米と1万平米以上の公園緑地が増えています。公園緑地が増えることで、その整備に関する都の補助金が増額されます。組合の総代会でも、市の担当者が「公園・緑地に位置付けたことで財源確保できた(補助金を増やせた)」と発言しています。
 そして、公園緑地を増やす代わりに、保留地の分を減らしています。これは不思議な状況です。「①保留地の平均単価は上がっています」「②土地が高く売れるようになりました」「③だから、高く売れるはずの土地を減らしました」という内容になっています。本来なら、「単価が上がっているので当初予定通りの面積で土地を売って、ちゃんと収入を確保しましょう」となるはずなのにそのようにはなっていないのです。不確定な保留地処分金の確保よりも、確実な公園緑地による補助金の確保を優先したという見方もできるのではないでしょうか。
 もう一点、特徴的なのは調整池の構造変更ということです。これは第5回目の事業変更のときにされています。第5回事業変更の理由書にこう記されています。「調整池を地下式から掘割式へ見直す」「管理上も含め各調整池をオープン化に変更」となっています。この調整池については、単純な話ではありません。
 なぜなら、根方谷戸・よみうりランド坂の高盛土工事に大きく関わってくるからです。高盛土工事を進めるための、根方谷戸の保安林指定を解除について東京都の内部でやり取りがされている資料では、保安林を管轄する産業労働局が区画整理を管轄する都市整備局にこのように聞いています。「都市整備局の基準において、雨水調整池の構造は原則として掘り込み式となっているが、地下式で差し支えないのか教えてほしい」「雨水調整池が地下式である場合には、算定量以上の雨が降った時に余分に水を吐き出す口が必要なのにそれが無いが大丈夫なのか」等々です。これに対して都市整備局は「調整池の構造は、将来施設管理者である稲城市との協議に基づき決定されたもので、地下式の構造で差し支えない」「余分な水の吐き出し口がないことについては、将来施設管理者の稲城市と協議の上決定されたものです」と、稲城市を前面に出しながら回答しています。
 実は私も過去に一般質問で確認しています。2016年9月7日の一般質問で「なぜ、この調整池が地下式構造になっているのか、その理由は」と聞きましたら「よみうりランド線と多7・4・5線の交差点の下に50メートルプール2個分に相当する調整池を整備します。これについては、景観に配慮するとともに、上部を広場として利用できるように地下式としています」と答弁されています。
 このように東京都も稲城市も地下式調整池の必要性について堂々と述べられていたのに、あっさりと掘込式に変更をされています。これはなぜなんでしょうか。その理由は、「事業費の削減」だということです。支出項目を見ると当初計画では地下式調整池3ヶ所で35億1千万円の工事費だったのが、現在の計画では掘り込み式調整池4ヶ所で12億5千万円となっています。組合としても工事費の増に対応するために、自慢のひとつだった地下式調整池を変更せざる得なくなっているのです。
 しかし、調整池の構造変更だけでは焼け石に水ではないでしょうか。最大の支出増の項目は、「整地費」の急増です。当初の予定の2倍以上、100億円も費用が増えています。理由は「高盛土工事の追加対策などにより」と答弁しましたが、これははっきり言えることはひとつです。そんなにお金かかるのなら高盛土工事なんかやるもんじゃないってことです。いくらなんでも100億円増、当初の2倍の工事費をそのまま認めて、事業計画を変更していいんでしょうか。何かあった時に、本当に市の責任が問われるのではないでしょか。
 市は「計画を進めれば、想定しなかったことに費用がかかる」と答えました。それは、やっていれば色々と起きるでしょう。けれど、その「色々」が起きたときにどういう対応をとるかということです。工事の規模や内容は変えずに、費用だけをどんどん増やしていくのか。それとも適正な費用にするために、工事の内容を見なおしていくのか、そういった点が問われていくのではないでしょうか。市に求められている役割は、イケイケドンドンで組合と一体となって進めていくのではなく、冷静な立場で監督して、場合によっては工事の規模を大胆に見直しをさせて支出増にストップをかけていくことなのではないでしょうか。


(4)収入について
①都・市補助金について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→都補助金の増額理由は、補助金対象となる道路や公園緑地面積のおよび事業費の増、電線共同溝に対する補助枠の拡充などによるものです。
→市補助金の増額理由は、補助金の基準となる総事業費が上がったことによるものです。
②保留地処分金について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→以下の表の通りです。
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→保留地処分金の実績や計画については以下の通りです。
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→保留地処分については事業協力企業である野村不動産に売却する保留地と、組合が直接販売する保留地があります。今後の予定は、事業計画の進捗に基づきながら計画的に保留地を売却する予定です。
③収入全体について、当初計画と現計画の違いについて聞きます。
→収入については、支出と同じ金額となっています。
→事業を円滑に進めるためには、収入の確保が大きな要素であると認識しています。保留地処分が早期に諮れるよう指導するなど、引き続き注視していきます。

<解説>
 収入のひとつのポイントは、市補助金についてどう考えるかです。稲城市土地区画整理事業補助規則では「補助額は当該事業費の5%を限度とする」となっています。「必ず5%まで出さないといけない」とはなっていません。当初20億と補助額を決めたわけで、それを増額するにはそれが必要だという理由や目的についてちゃんと議論がされたのか。また、それが適正化どうかチェックされたのかどうか、それが問われるのではないでしょうか。
 1年前の建設環境委員会の資料では、2018年の1年間で南山区画整理の補助金は100%支給済みとなる予定になっていました。しかしそれがいつの間にか補助額が増額されて、予算に盛り込まれていました。総額で6億円も増額するというのに、理由も目的もほとんど議会で説明されていません。これは、丁寧さを欠いていると言われても致し方ないのではないでしょうか。
 収入のもうひとつのポイントは、保留地処分金の確保です。南山区画整理事業の最大の根幹は保留地がちゃんと処分できるかどうかにかかっています。2018年に行われた組合の総代会でも組合員から率直な意見が出されています。「この計画では平成34年(2022年)以降の保留地売却の計画があり、地権者が賦課金を支払うようになっては困るので、保留地処分が予定どおり進まない場合の対策は検討しているか」「理事、事務局、コンサルは保留地処分に責任を持ってほしい」となっています。これは切実な声です。
 保留地処分のこの間の実績と今後の予定を見比べると、2012年から2017年の6年間で処分した保留地の面積は10万4900㎡で保留地面積の約4割、総額は116億5千万円で保留地処分金の約3割です。単価は平均で約13万円です。ところが2018年から毎年ように2万㎡とか6万㎡もの土地を処分するのに、その単価は16万円とか17万円とかずっと高止まりするようになっています。2024年まで、ずっと土地が高く売れることが前提の計画になっています。2012年から17年までの6年間で116億円の処分額だったのが、2018去から7年間で倍以上の256億円も確保をするという内容です。ジャイアンツタウンの計画など、一定の根拠はあるかもしれませんが、それにしたってそうとう無茶な内容ではないでしょうか。この計画の進捗について、本当に慎重に見極めていく必要があるのではないでしょうか。

(5)今後の見通しについて
①「工事費用」が増加し続けていることについて認識を聞きます。
→事業費が増加することは、組合事業の採算性にも大きく影響するものであり、市としては引き続き注視していきます。
→当初計画では想定しえなかったことに対する対応が必要になったことにより、事業費が増加していますが、その中でも組合においては事業費の削減に努めていると認識しています。
②南山東部土地区画整理事業へのこれ以上の税金投入は行うべきではないと考えますが、市長の認識を聞きます。
→事業費については事業の概ねの完成形が見えてきている段階であり、現時点では今後大きく変更となる要素はないものと認識しています。なお、組合土地区画整理事業に対する補助については、稲城市土地区画整理事業補助規則に基づき、適正に行っていきます。

<解説>
 工事費の増について、「組合は削減に努めている」と市は答弁しています。しかし、本当にそうなっているのでしょうか。平成28年12月17日に行われた組合の総代会の議事録では、このように書かれています。「総代意見:この事業計画では工事費が増加している現状を反映しているようだが、今後も工事費は上がると思われるので、その対策はあるか」「組合:無駄のある工事を減らし、工事費削減に取り組む予定である」となっています。
 この時の事業規模は476億円で、整地費は189億8千万円です。これがどうなったのか、現在の事業規模は535億円、整地費は201億3千万円とさらに増えています。削減どころの話になっていません。実際に組合員からも工事費が増え続けていることへの杞憂がだされ、組合も工事費を削減すると答えているのに、それがその通りになっていない。本当にこのままズルズルと工事費だけが膨張し続けていっていいのでしょうか。私は本当に心配でなりません。
 市長は「これ以上の事業変更はない」と答えました。これは本当に重い答弁です。ここまで工事が進んでいる中で、今から引き返すことはできません。しかし、少なくとも市民や地権者にこれ以上の負担を負わせない内容にしていくことが求められます。もうひとつは、何が何でも計画を終わらせるために「とにかく保留地を売ればいい」というわけではないということです。稲城市民憲章にある「太陽と緑をたいせつにし、土の香りのあるまち」に相応しいまちづくりをしていくことも市と組合には求められているのではないでしょうか。
 そして、そういったまちづくりを進めていくためにも積極的に情報を明らかにしていくことも必要です。市は「毎年、年度初めに市議会に計画を報告している」と答えましたが、第6回の計画変更は年度途中に行われ、ほとんどその内容は知らされませんでした。そして、いつの間にか補助金の総額が増えているという状況です。これでは、市民の理解を得るという事にはならないのではないでしょうか。私は今回の質問準備にあたって東京都から資料を取り寄せるなどをしましたが、私でもこれくらいの資料を集められます。そうであるならば、市や組合が積極的に状況を明らかにして批判的な声に対しても謙虚に耳を傾ける姿勢が求められるのではないでしょうか。南山区画整理についてはこれからも市民に実態を知らせながら、市が説明責任と監督責任を果たしていくことを求めていきます。
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※南山開発区域の俯瞰図

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