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9月議会一般質問の報告③~南山区画整理「根方谷戸・ランド坂」高盛土工事~ [市議会]

 報告の3回目は「4.南山東部土地区画整理事業『根方谷戸・ランド坂高盛土工事』について」です。この項目は今回の質問の中で一番ボリュームがあり、この部分だけで1時間のやり取りを行いました。少し長いですが、やり取りの全体を報告します。
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※工事が進み斜面が削り取られている根方谷戸

4.南山東部土地区画整理事業「根方谷戸・ランド坂高盛土工事」について
(1)南山東部土地区画整理組合(以下、組合)の事業計画について
①組合の事業計画の歳入における国・都・市の補助金の執行状況を聞きます。
→執行済みの補助金は、国庫補助金が970万円、都補助金が29億9,962万7千円、市補助金が14億1,830万円です。
→今後の予定は、都補助金を約67億9千万円、市補助金を約6億1千万円執行をしていく計画です。
②組合の事業計画の歳入における保留地処分金の確定状況について聞きます。
→平成27年までに保留地を処分したことによ歳入合計は115億1,561万8,977円です。
→現在の事業計画では、今後、保留地処分金として約238億3千万円を予定しています。
③組合の事業計画の歳出における保安林解除区域の工事に関する事業経費について聞きます。
→保安林解除区域の工事に関する事業経費は約69億円になると算出しております。
→保安林解除申請時点における全体経費の総額406億円に対して、約17%となります。
④現在の事業計画と事業開始時の事業計画の歳出の変更内容について聞きます。
→変更内容については工事費が約105億円の増額、保留地処分関連費は約16億9千万円を全額削減。損失補償費の増額と、借入金や事務費の減額などです。

(2)保安林の解除について
①保安林解除申請書に記載されている解除理由について聞きます。
→林野庁に申請した保安林解除の理由は「住宅団地の造成のため」としております。
→「急傾斜地崩壊箇所の整備」や「急カーブや急勾配のある事故多発路線の整備改善」については保安林解除の理由には記載しておりません。林野庁に提出した保安林解除申請事前相談書には、その旨を記載して提出しております。
②平成28年4月23日の工事説明会で盛土工事を行う理由として組合から住民に説明された内容について聞きます。
→工事説明会においては、土砂崩壊防備保安林区域や急傾斜地崩壊危険個所に指定されている区域や、急カーブや急勾配のある道路についての整備改善を行い、住民生活の向上を図るために盛土工事を行うと説明しております。
→「住宅団地の造成」につきましては、坂下住宅周辺の方々には平成23年に開催した事業説明会で説明をしております。
(3)工事後の土地利用について
①盛土工事完了後の土地利用の用途別の面積について聞きます。
→土地利用の計画は、公園用地約3.6ヘクタール、宅地用地約4.4ヘクタールのほか、道路等の公共用地となる予定です。
→保留地は宅地用地約4.4ヘクタールがすべてになる予定です。
②宅地部分の売却購入状況について聞きます。
→宅地としての売却は行っていません。
→保留地は事業協力者である野村不動産に売却する予定として、基本協定を締結しております。
<解説>
 南山の区画整理事業には、執行済み額と未執行額を合わせると100億円以上の補助金が投入される計画です。組合施工による事業ではありますが極めて公共的な性格が強いのだという事が、この点だけでも良くわかります。そして、保留地処分金は確定済み額と未確定の額を合わせると約350億円です。全体収入計画のうち補助金を除くと、保留地処分金が相当数を占めています。この分が予定通り執行されないと、つまり土地が予定通りに売れないと収入計画が大きく狂ってくることになってしまうのです。そして、盛土工事によってできる土地の半分以上は宅地用地としての保留地で、これは既に野村不動産と契約済みであるということです。
 土地の在りようの問題は住民説明会での齟齬にもつながっていきます。国に提出している保安林解除申請書には保安林の解除をして盛土工事をする理由として、「住宅団地の造成のため。同士の土地利用状況は市北部に既成市街地、西部に米軍施設・ゴルフ場、中央部から南西部に多摩ニュータウンなどの住宅地があり、新規の住宅開発が可能なまとまりのある区域(保安林区域を含む)は、当該土地区画整理事業の事業地である南山東部地区だけである。」と書いてあり、この中では「危険区域を整備するため」とか「道路のカーブを直すため」などと一切書かれていません。
 しかし、4月の工事説明会では一切その点にふれませんでした。住民の方から「なんで、こんな工事をするのですか」と聞かれたら、「崖地と道路が危険でそのために工事をやる」と答えています。盛土をしてその上部を住宅地にするためにやるのだとは一言も言いませんでした。これは説明としてはとても不十分で、本当に不誠実な対応だと思います。危険性の解消をするというのなら申請書にそのように書けばいいし、住宅地が必要だと思っているのなら説明会でそのように答えればいい。それぞれで都合のいいことを理由に挙げていて、けっきょく本音が何処になるのかまったく分かりません。こういう対応は調べればすぐにわかるし、わかれば不信を増すだけです。市としては、こういった対応については十分に指導をするべきだと求めました。
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※保安林解除の申請理由書

(4)「平成27年7月29日付南山東部土地区画整理組合と野村不動産で交わされた協議書(以下、協議書)」について
①「協議書」の内容について、市は事前に組合と相談や調整等を行ったのかどうかについて聞きます。
→協議書に記載されている内容のうち、土地区画整理事業完了後における盛土造成地における民有地への指導については、組合と協議しております。
→市と組合では事業完了の民有地における補修等の指導・監督については市が行うことを協議しておりますが、この協議書について市は関与をしておりません。
②「協議書」の法的拘束力や有効期間について市の認識を聞きます。
→組合と保留地を購入する予定の野村不動産が取り交わしたものですが、両社の間には法的拘束力はあるものと認識しております。なお、この協議書には有効期間が記載されておりませんが、市としては協議内容は存続していくべき事項であると考えています。
→協議書は市は直接的に法的拘束力が生じるものでないと認識しておりますが、市が事業完了後の指導・監督する旨が記載されていることからこれららの協議内容は遵守されるべきであると考えております。
→野村不動産が第三者に土地を売却する場合には、宅地建物取引業の第35条に規定されている重要事項説明に該当すると考えており、法的拘束力は継承されていくべきであると認識しております。
③「協議書」内で盛土の補修について記載があるが、具体的な費用分担や補修内容について市の認識を聞きます。
→盛土造成地において補修を要する事態が生じた場合には、原因者または当該箇所の土地を有する者が負担を行うべきであると認識しております。補修内容に関しては、市が指導・監督していきます。
→盛土内の排水施設や計測器等についても、盛土に付属する施設を捉えておりますので、必要に応じて原因者の負担により機能回復を図るべきであると考えております。
④組合解散後に、土地利用者と稲城市で新たな協議書を交わすことについて市の認識を聞きます。
→当該区域の土地を利用する者には、この協議内容が継承されていくべきであると考えておりますので、拘束力のある手段を講じていきます。
→協議書の内容を精査し法的拘束力のあるものに見直しするとともに、この区域における土地利用に関しては届出を義務付けるなど、手段を検討していきます。
⑤土地の転売等による土地利用者の変更した場合には、その都度協議書を交わすことについて市の認識を聞きます。
→この協議内容が継承されるような手段を講じていきます。
⑥「協議書」が作られた理由について市の認識を聞きます。
→林野庁及び東京都労働局などの監督官庁より、保安林解除申請にあたり保留地の購入予定者に周知をするよう指導を受けたことが理由です。
<解説>
 この協議書は、今回明らかになった物の中でも特に重要な中身となっています。多少長いのですが、全文を掲載します。

協議書

 大規模盛土上の土地利用計画について施行を行う南山東部土地区画整理組合(以下甲という)と土地利用を行う野村不動産株式楷書(以下乙という)は協議し、下記のとおり確認した。

 甲は、設計において要求される性能を満たす構造を宅地造成等規制法に基づく審査を受けて決定し、組合以外の第三者を含めた体制で施行を監督し、大規模盛土上部にヒビなどが入るような施行不良を生じさせないよう、甲は万全を期して造成工事を施工し、次の条件を付して乙に土地を引き渡す。
 建築に際して乙は、大規模盛土構造へ影響を及ぼすことが無いようにするため、大規模盛土上部に杭を設置する場合は別紙に示す導水管、現況地盤暗渠排水管、地表水処理暗渠排水管、集水桝を避けて設置し、地下室等を設置するためには地盤を掘削する場合は別紙大規模盛土区域掘削可能範囲内で設置するよう計画・施工する。
 甲は、造成中、造成後を通して道路・公園用地などの公共施設に設置する観測機器により、大規模盛土内の地盤変位や土中の水圧などを観測し、異常を検知した場合には原因を究明して対策を講じる。土地区画整理事業完了後は稲城市がその役目を引き継ぐものとする。その上で、前述の観測によって安全性を稲城市が追跡確認し、盛土を補修する必要が明らかになった場合には、乙が水平ボーリングで地下水を排除する等の盛土補修を行う。盛土の補修内容については、土地区画整理事業中は甲が、事業完了後は事業を監督すべき立場にある稲城市が原因の究明、盛土補修の指導・監督をする。
以上

 この協議のあかしとして本書2通を作成し、甲、乙が記名押印のうえ、各1通ずつ保有する。
平成27年7月29日


 これは重大文書です。盛土の上部は普通の土地ではないということが改めて明らかになったこと、将来にわたる監視や管理が必要なこと、それを稲城市もおこなう事が示されているのに市は協議の当事者には含まれていないこと、などがわかってきます。そして、この協議書の内容は組合が解散をして、土地が野村不動産から第三者の手に渡ったあとも内容を有効にしていかなくてはなりません。そのための手立てや対応について、市の認識を質しました。
 また、やり取りの中でこの協議書が作られた理由は「監督官庁の指導」であったということも明らかになりました。監督官庁が指導によってこのような文書を作成無くてはならないような、そういう土地だということがこの点からもわかります。この協議書の存在自体が、この盛土計画の危険性や不安性を大きく証明をしているのではないでしょうか。
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※実際の協議書

(5)雨水や地下水の排水について
①盛土工事部分の公共下水道としての雨水管渠の設置状況と設計の基本的な考え方を聞きます。
→南山東部土地区画整理事業区域内における、公共下水道雨水排水整備計画の基本的な考え方は、放出先の河川計画に合わせて時間あたりの降雨強度を50ミリとして、雨水管渠等を整備する計画としています。
②盛土法面排水施設の設置状況と設計の基本的な考え方について聞きます。
→盛土内の排水処理対策として、総延長約3,740メートルの排水管を設置していきます。法面部には緑化のための植生シートを敷設し、U字溝により表面水を集めて雨水管渠を経て調整池へ排水する計画としています。
→時間当たりの降雨強度は60ミリで計画しています。
③調整池の設置状況と設計の基本的な考え方について聞きます。
→一時的に雨水を貯留することにより、下流の排水施設や河川への流出量を抑制する計画としています。
→調整池は都道よみうりランド線と多7・4・5号線の交差点付近に、概ね50メートルプール2個分に相当する計画容量約5千トンの調整池を整備します。これは景観に配慮するとともに、上部を広場として利用できるよう地下式としております。
④工事中の雨水等の排水対策について聞きます。
→造成工事中の雨水等の排水対策として、仮設の調整池を設置して雨水や土砂等の流出抑制を図っていきます。
→8月22日の台風9号の際には、根方谷戸川から溢れた水が三中通り周辺まで流れたことは確認しています。工事との直接的な因果関係については検証されていませんが、工事に際してはできる限りの対策を図るように組合を指導していきます。
<解説>
 排水施設については工事が完了する前の段階での対応も求められます。8月22日の台風9号の通過後に矢野口三中通りのマンショングローブスクエア入口周辺に大量に残った泥水がたまり、通過後には泥が道路一面に広がっていました。8月22日には、私も地域の人と一緒に盛土の工事現場を見に行きました。そうすると、谷戸の奥から削られた斜面を通って泥水が大量に流れ出していて、それがランド線の下の用水路にすべて流れ込んでいました。
 そして、用水路の下流の方に当該の三中通りがあるわけですが、そこの側溝から大量の泥水が湧き出してたまっていたのです。市は「盛土工事との因果関係は検証はしていない」と言いましたが、明確に否定もしませんでした。やはり、何らかの関係制があるということです。今後も数年にわたって工事は続きます。工事中の大雨の対策について、十分な対応が求められます。
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※泥水が流れ出ている工事現場

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※三中通りに広がる泥水

(6)盛土内部の計測体制について
①盛土内の地盤の沈下や変形を確認するために設置される計測器の種類と数を聞きます。
→盛土及び地盤の変形量を測定する挿入式傾斜計を6箇所、盛土内の縦方向の動きを計測して地盤の沈下量を測定する層別沈下計を18箇所、盛土内の水圧を計測することで内部の水の有無を把握するための間隙水圧計を8箇所設置します。
②これらの計測器を設置して維持管理していくための費用の事業計画内の項目と金額について聞きます。
→計測器及び設置に伴う工事費用として約8千万円、また盛土施工中の外部機関による施工管理費用として5千万円、合わせて1億3千万円となっています。
→盛土工事の施工については第三者的な機関を設置し、施工管理や計測監理等を行うこととしており、地質関係の専門コンサルタントに依頼して観測と解析を行う予定です。
③これらの計測器の耐用使用年数を聞きます。
→計測機器の選定については今後、高盛土工事施工管理第三者委員会で決定していきます。現時点では機器毎の具体的な耐用年数でありませんが、概ね10年以上とされていると聞いています。市としては、長期にわたり使用が可能な機種が望ましいと考えています。
→挿入式傾斜計と層別沈下計については基本的に盛土工事の施工管理に必要な計測器であり、盛土地盤の変位が収束するまでの間に使用することとなります。間隙水圧計については可能な限り長期にわたり使用でき、交換が可能な機種を高盛土工事施工管理第三者委員会で決定していきます。
④これらの計測器について、組合解散後はすべて稲城市が引き継いでいくかどうかについて市の認識を聞きます。
→これらの計測器については、事業の完了時に組合より市が引き継いでいきます。引き継いだ後の交換や修理についても市が行っていきます。

(7)継続した監視体制と管理について
①工事施行のための管理監視体制について聞きます。
→高盛土工事施工管理第三者委員会を導入し、管理監視体制を整えて確実な施工を行います。市としても適宜、必要な指導や監督を行っていきます。
→第三者委員会は7月に設置され、施工管理と計測監理等について検討を行っています。論議された内容については必要に応じて報告等を行っていきます。
②工事完了後の道路、公園、緑地、宅地、排水施設の稲城市役所内での管理担当部署を聞きます。
→道路は都市建設部管理課、公園及び緑地は都市建設部土木科、汚水や雨水の公共下水道施設や調整池は都市建設部下水道課、法面の排水施設は都市建設部土木科が管理担当部署となります。
③盛土内に設置されている計測器の維持・管理・計測について稲城市役所内での管理担当部署を聞きます。
→現在、第三者委員会で施工管理方針を検討しておりますので、この結果に基づき市としては一元管理を計るような管理担当部署を決定していきたいと考えております。
④盛土全体の維持管理を行うための専任部署を設置することについての市の認識を聞きます。
→盛土造成工事区域の維持管理を行うための専任部署を設ける予定はありませんが、一元管理を 計れるよう担当部署を決定していきます。
<解説>
 盛土内の計測器の種類や役割についても、今回は詳細を確認しました。特に「間隙水圧計」は大変重要です前回の一般質問でも明らかにしましたが、盛土内部に水が存在していたらそれでアウトだとなっています。盛土があるかぎり、この水圧計による計測は延々と続いていき、そのための交換や修理も稲城市がずっと背負い続けていく事になります。
 そして、それらの計測器を管理するための一元管理担当部署を設置すると答えました。これは今回の質問で始めて明らかになった事実です。確かに計測器は盛土内のあちこちに散らばっており、管理部署を分けて対応することは適切ではありません。そのために、一元管理をする部署を決定する。私は盛土区域内の全域を管理する専任部署の設置を求めていますが、専任ではありませんが、一元管理をする部署を設置することはひとつの前身であります。この一元管理の管理担当部署の設置時期や役割、責任範囲については早急に明確にしていく事を求めたいと思います。

 今回、盛土工事についてだいぶ細かい部分まで質問しましたが、聞けば聞くほど明らかになってくるのはこの盛土工事がとてもまっとうな内容ではないということです。完成した土地は極めて不安定で、何かあれば大惨事につながるような内容であり、そうしないために何重にも安全対策をしなくてはならない。その安全対策は盛土がある限り続いていき、将来にわたって管理コストと不安だけが残されていくわけです。
 既に工事は始められていて、横を通るたびに貴重な緑や林が削り取られて斜面がむき出しになっていく光景が広がっていくのはとても悲しいものです。これからもこの盛土工事については安全対策、監視体制、工事施工中の安全管理について求めていきますし、十分な監視・監督体制ができないうちは本工事の実施をしないことを求めていきます。

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