SSブログ

稲城市も「地方創生」!? [市議会]

 本日、議会閉会中の委員会活動として福祉文教委員会が開かれました。
 議論したのは「稲城市まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下、地方創生戦略)」という、だいぶ仰々しい計画の福祉教育分野についての報告と議論です。
100501.jpg

 この「地方創生戦略」は、2014年になって急に安倍政権が言い始めた「地方創生」の一環で、人口についての「国の長期ビジョン」と「国の総合戦略」に合わせて、各自治体で「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を作ることが求められたものです。
 「地方創生」と言うと、安倍政権で「石破さんが地方創生大臣をしている」くらいしか認識がなかったのですが、この国の方針に合わせて全国のすべての地方自治体で「地方創生戦略」を作成することが推進されているのです。

 この場合のポイントは、あくまでも作成は「努力義務」であって必ずつくる必要はないことです。しかし、作成を市内自治体には国の地方創生関連の交付金(予算)が来ないので、結局は作らざるを得ません。しかも、今年の10月までの早い時期に作成する自治体には、交付金が上乗せられるので、多くの自治体でとにかく早く作るということが第一義になって進められているのです。
 稲城市はまさしくその通りで、今年の2月に企画を立ち上げて、4月~6月に各課のヒアリング、6月に第1回の検討会議、7月に第2回の検討会議、8月に議会総務委員会と市民の意見公募をして一気に仕上げようとしていました。

 しかし、9月の議会で何人かの議員がこの問題を取り上げ、内容について意見が出されました。特に文中の「市議会の意見を反映するとともに」と書いてあるのに総務委員会で報告しただけで、総務委員会に出席していない議員には説明すらされていないことに批判が出て、9月議会終了後に福祉文教委員会や建設環境委員会でも報告されて、議論がされることとなりました。
 そういった経過で作られているので、内容についても相当粗い印象があります。「人口推計をだす」「人口を増やすための基本目標を作る」「基本目標に沿って個別目標を設定する」としていますが、それぞれがもともとある数字や計画から引っ張ってきた物を切り貼りした感じとなっています。

<人口推計>
 今回の地方創生戦略の冊子全体61ページのうち、40ページまでは人口推計についての計算方法と考え方が掲載をされています。最終的な結論は「人口の純移動率が現状維持(出ていく人よりも入ってくる人の方が多ければ)」で、「特殊出生率が国の目標通り(稲城市の現状1.50から1.80に増)」になれば、「人口は2050年まで増えていく」というものです。
 純移動率はともかく、特殊出生率は全国平均が1.38、東京都平均が1.11に比べると、稲城市は1.50と高水準になりますが、それでも1.80にするというのは相当ハードルが高くなります。市の説明は「特殊出生率1.80は国の長期目標だから、それを設定した」と言いますが、1.80が現実的に実行可能かどうかの検討は別にして設定をされていると思わざるを得ませんでした。
 この人口推計によれば、現状の人口8万7千人は15年後には10万人を超えていくことになっていて、年少人口(0歳~14歳)は2050年まで毎年1万3千人が維持されることになっています。ちなみに「稲城市子ども・子育て支援事業計画(以下、子育て支援計画)」では、「児童人口将来推計の全体では、…平成31年度に向け減少傾向で推計されています」として、2017年には1万人を切って9千人台となってそのまま推移していくとなっています。
 地域創生戦略では人口は増える(増やす)としていながら、子育て支援計画では減っていくとしている。この矛盾が、後の目標設定にも表れてきます。

<基本目標>
基本目標は、次の4つが示されています。
1.稲城市における安定した雇用を創出する
2.稲城市への新しいひとの流れをつくる
3.若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
4.時代にあった地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する

国の総合戦略はどうか。それは、次の4つとなっています。
1.地方における安定した雇用を創出する
2.地方への新しいひとの流れをつくる
3.若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
4.時代にあった地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する

まったく、同じです。
 つまり、国の作った基本目標をそのまま引き写して、「地方」を「稲城市」に変えただけの文章となっています。
 国の目標は「大都市圏以外の人口減少になやむ地域」を主な対象として作っているので、それを東京の自治体、しかも今後一定の人口増が予想される稲城市が目標としてそのまま引き写すと、とてもチグハグに感じてしまいます。
 特に、「子育てはあるのに、なぜ教育が大目標に入らないのか?」という疑問には最後まで明確な答えがありませんでした。さすがに、「国の目標に無いので、教育は入れませんでした」とは答えられなかったのではないでしょうか。

<個別目標>
 個別目標は数が多いのですべてを書くことはできないのですが、福祉文教分野として最も気になったのは「保育サービスの充実」です。
 ここでは、前述の子育て支援計画からの数字をそのまま引用して、「保育所、認定こども園、保育ママ、認証保育所等の定員」を5年間で317人増やすことを目標としています。しかも、増やすのは「保育所、認定こども園、保育ママ、認証保育所」のそれぞれをまんべんなく増やす」というもので、多くの人が願っている「認可保育所の新設・定員増」とはほど遠い内容です。
 人口推計のところで述べたように、子育て支援計画は「子どもの数が減っていく」ことを前提にして目標数字を設定しています。しかし、地方創生戦略は「人口は増やしていく、子どもの数も減らさない」ために計画を作っているはずです。ここに大きな矛盾があるのです。
 「子どもの数を増やすため」の地方創生戦略の目標に、「子どもが減っていくことが前提」の子育て支援計画の数字を使っている。結果的に、目指すべき人口増の割には待機児童対策はとても貧弱な物になっています。説明では「ハードからソフトの支援に力を入れて」や「様々な事情を考慮して」などと言われましたが、本気で人口を増やす、本気で子育て支援をする、本気で待機児童対策をするものからはほど遠い内容となっているのです。


 今回、突如出てきた「稲城市まち・ひと・しごと創生総合戦略」について、委員会質疑を通して自分としてもじっくり考えることができました。名前だけを見ても、ほとんど内容を類推することのできない計画です。
 「地方創生」と言葉は大きいですが、実際に論議をしたら中身が追いついていない状況も良くわかりました。ある方が論文で「地域」と「地方」の考え方の違いについて述べられていました。そこでは「生活の場としての地域」が、「中央の利益追求の手段としての地方」に転落をさせられた。と定義されていました。
 十把一絡げの「地方」ではなく、特色ある風土と歴史と住民が作ってきた「地域」をどのように作っていくのかが求められます。それは、国のお仕着せの方針や目標をそのまま使っている限りは地に足の着いたものにはならないのではないでしょうか。
 これからも「地方創生」ではなく、「まちづくり・地域づくり」の観点で論議をしていきたいと思います。そして、これだけ様々な意見を出したのだから、よもやそれをそのままスルーして決定がされないように引き続き注視をしていきたいと思います。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:地域

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。