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稲城市議会3月議会一般質問報告1~介護保険制度~ [市議会]

 3月5日に稲城市議会一般質問を行いました。今回は「介護保険制度」「生活保護」「動物愛護」の3つのテーマで質問しましたので、それぞれ3回にわけて報告します。
 1回目は介護保険制度について報告します。

1.誰もが安心して暮らすことのできる介護保険制度に向けて-第8期介護保険事業計画について
(1)「地域共生社会の実現」について
①「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」の概要は?
→地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制を整備する観点から、「市町村の包括的な支援体制の構築の支援」「地域の特性に応じた認知症施策」「介護サービス提供体制の整備等の推進」「医療・介護のデータ基盤の整備の推進」「介護人材確保及び業務効率化の取組の強化」「社会福祉連携推進法人制度の創設等の措置」を講じるものです。
→このうち、市の介護保険事業計画第8期に関わる主な項目は、「包括的な支援体制」「認知症施策」「介護サービス提供体制の整備」「介護人材確保及び業務効率化の取組」などです。
②社会福祉法等の改正を踏まえた「重層的支援体制整備事業」の概要は?
→包括的な支援体制の構築を推進するため、「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の三つの支援を一体的に行う事業です。
→「断らない相談支援」の対象については、属性や世代を問わない相談とされています。
→「重層的支援体制整備事業交付金」の概要は、介護、障害、子ども、生活困窮の分野の相談支援や地域づくりに関わる既存事業の補助金を一体して、新たな機能を追加して国が補助金を一括交付するものです。
→市としての検討状況について、2020年8月に生活福祉課、障害福祉課、高齢福祉課、子育て支援課の担当者が集まって各部署での現状等についての情報交換を行っており、現時点では福祉部全体で検討しています。
<解説>
 現在の第7期介護保険計画が3月で終わり、4月から新たな3ヶ年の介護保険事業計画が開始されます。第8期介護保険事業計画の内容について、誰もが安心して高齢期を過ごすための公助としての介護保険制度を求める立場から質問しました。
 「地域共生社会」という用語は、第7期計画の中でも出てきます。第7期計画では介護保険計画の基本理念の中で、「『我が事 ・ 丸ごと』の地域共生社会を実現」することをめざす。「地域共生社会とは地域包括ケアシステムを包含する概念」だと述べています。これが、第8期計画では新たに項目を1つ起こして、「地域共生社会の実現に向けた展望」という項目を設けています。それでは、具体的に何をしようとしているのでしょうか。
 この地域共生社会を具体化するために、昨年2020年9月に社会福祉法が変えられて、今度の4月から施行されます。かなり重要な内容を含んだ変更ですが、世間的にはあまりその内容が知られていません。この法改正の中で、特に市の介護保険に関わるのが「包括的な支援体制」「認知症施策」「人材確保や業務効率化の取り組み」だということです。
 私は「包括的な支援体制」というのが一つのキーワードになるのではないかと考えています。包括的支援体制とは、「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を行う事業だという事です。それを具体化するために、国が押しているのが「重層的支援体制整備事業」です。
 では、重層的支援体制事業とはなにか?厚労省の資料によると、次のように書いてあります。「市町村において介護、障害、子ども、困窮の各法に基づく相談支援事業を一体的に行う事」「対象者の属性を問わず、包括的に相談を受け止め、必要な支援を行う」となっています。
 これまで介護なら地域包括支援センター、障害は基幹相談支援センター、子どもは利用者支援事業、稲城でいうなら子ども家庭支援センター、生活困窮は暮らしの相談窓口の、それぞれで対応されてきました。この4つの事業を1つにまとめることを、「断らない相談支援」だと言っています。
 そして、これまで4つの事業にそれぞれ出していた国の補助金を、まとめて1つの相談事業として補助金を一括交付する。それが「重層的支援体制整備事業交付金」だということです。これまで一部で批判もあった縦割りだとか、窓口のたらい回しだとか、そういった課題の解決という側面もあるかもしれません。ただ、私はここに大きな問題が潜んでいると考えます。
 なぜなら、地域包括ケアセンターの運営をしている介護保険事業は社会保険制度であり、その費用の23%は保険者の保険料で賄われているからです。それ以外の事業は税金で運営されている、福祉制度です。
 介護保険は共助なのか、公助なのか。これまで繰り返し行政が言ってきたのは、「介護保険は保険制度であり」「保険料を出し合って介護が必要な人を支える助け合いの制度」だということです。だからこそ財政上も特別会計が組まれ、納められた介護保険料は介護保険の運営のために使われるとされてきました。
 ところが、この地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制整備ではそれを崩して、介護保険料の一部を介護保険事業以外の子育てや生活困窮のためも使えるようにする、としています。保険制度だと、高齢者の助け合い制度だと言って保険料を納めてもらったのに、それを他の福祉制度にも使えるような道を開くわけです。もしそうするのであれば、私は介護保険は保険制度をやめて、税による福祉制度に戻すべきだと思います。
 問題が複雑化、多様化して、ある特定の分野の窓口だけでは解決しきれない状況があるというのは良く理解できます。ワンストップで解決するために全体をひとつでみる相談体制が必要なのも、その通りだと思います。そうであるならば、一方は保険制度による共助で、一方は税による公助というような区分をやめて、全部ひっくるめて公助の制度にして、解決を目指していく事が必要ではないでしょうか。
 稲城市においてはまだ具体化されていないようですので、もし今後検討をしていくのであればそういった点もふまえて十分に慎重な議論を求めたいと思います。私もこれからの動向をよく注視をしたいと思います。

(2)「高齢者の住まい」について
①市内における高齢者の住まいの現状とその評価は?
→一般の住宅に加え、低所得者向けの公営住宅や、認知症高齢者向けのグループホーム、常時介護が必要な要介護高齢者向けの介護施設など様々な高齢者の住まいが整備されています。
→サービス付き高齢者向け住宅及び有料老人ホームについては、介護保険事業計画のガイドラインである「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」において「入居定員総数を記載するよう努めること」とされています。
②高齢者の住まいの確保について、第8期計画内での取り組み計画については?
→中間とりまとめでは、令和5年度に認知症グループホーム1か所を整備することとしています。グループホームを設置する地域については、現時点では未定です。
<解説>
 高齢者の住まいについて、現在の第7期計画と今度の第8期計画の違いとしてあるのが、「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」と「有料老人ホーム」の扱いです。第7期計画の時は施設数と定員が記載されていましたが、第8期計画では入居者の年齢別や要介護別、さらには稲城市民なのか、市外の人か、都外の人か、そういった事まで調べています。
 これらの施設はこれまでの介護保険計画の中で、市が計画を作って整備をしたものではありません。一部のサ高住は市も関わった経過はありますが、多くは民間会社の判断で作られて結果的に増えていったものです。運営の質の管理や安全対策について、市が管理監督できる権限もありません。これらの施設を介護保険計画の中でどのように扱うのか。グループホームや特別養護老人ホームと同列の物とするのか、もしくはグループホームや特養施設の代替とするのか、重要な点だと思います。安心して地域で暮らしていくために、年金生活者でも入る事のできる施設のさらなる整備をこれからも求めていきます。

(3)「介護人材」について
①市内における介護人材の現状とその評価は?。
→介護労働安定センターが実施した調査による、介護サービスに従事する従業員の不足感は全体で65.3%でした。離職率は15.4%ですが、勤続3年未満の離職者が離職者のうちの63.5%と示されています。また、「人手が足りない」や「身体的負担が大きい」等の回答が多いことが分かっており、市内における介護人材の現状も同様であると考えます。
②介護人材の確保・育成・定着支援について、第8期計画内での取り組み計画は?
→中間とりまとめでは、介護従事者等への研修を引き続き実施することや、特に法人内での対応が難しい小規模事業者への支援を行うこととしています。
→、「元気高齢者等も含めた生活支援の担い手等の育成」については、これまで介護にかかわったことない人たちが、介護の基本的な知識や技術を身につけるための生活援助型スタッフ研修を各圏域で実施することとしています。研修後には、向陽台地区で行われている「すまいるネット」のような生活支援の助け合い活動の担い手等を想定しております。
<解説>
 介護人材の状況については、市としても「人手が足りない」「身体的負担が大きい」状況があるという認識でした。
 市はこの第8期計画を作るにあたって、市内の事業者などに人材確保や定着の状況についてかなり詳細なアンケートを取っています。介護保険運営協議会で第8期計画の検討資料として配布されましたが、それ以外の場では公にはなっていません。私はこういった現場の実態を把握するためのアンケートは重要な事だと思いますし、これらの声に基づいて計画なども作るべきだと思います。
 しかし残念なのは、そういった様々なアンケートが第8期計画の中ではほとんど示されていません。実際に掲載されているのは、「年齢構成」と「通勤手段」と「通勤時間」です。年齢構成は東京都平均に比べて50代以上の人が多い。通勤手段は自家用車の人が多くて、通勤時間は5分以上20分未満の人が多い、というアンケート結果です。このアンケート結果から「身体的負担が多い」や「人手が足りない」とは、読み取れないのではないでしょうか。
 例えば、介護の仕事をやめた理由の男性の1位は「将来の見込みが立たなかったため」とか、市内の事業所で介護福祉士の数が適切だと答えたところは1つも無かったとか、介護事業所の新卒採用についてはすべての事業所が「非常に苦戦」と答えているとか、そういった調査結果こそ掲載すべきではないでしょうか。内容的にはネガティブな結果にしかならないのですが、これが今の介護業界の置かれている実態なわけですから。私はこの調査結果についてしっかり受けとめるのであれば、ちゃんと載せるべきだと求めました。
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※市内の事業所に行ったアンケート結果の一部

 もう一点は、新たな取り組みとして「元気高齢者等の含めた生活支援の担い手等の育成」というものが載っています。これは、これまで介護に関わったことのない人たち、元気な高齢者に研修を受けていただくというものです。その上で、それではどうするのかということです。
 人材が不足している訪問介護職員の代替となってもらうのか、それとも認知症サポーターなどのボランティアの延長線上として位置付けられるのか。答弁としては、助けい活動の担い手になってもらうというものでした。
 これまでも介護人材の問題について取り上げてきましたが、基本的には賃金や労働時間などの処遇改善がなければ人材の確保や定着が困難なのは明らかです。引き続き、処遇改善を求めていきます。

(4)「認知症施策」について
①市内における認知症施策の現状とその評価は?
→地域包括支援センターに配置した2人の認知症支援コーディネーターを中心に、総合的に認知症施策を推進しております。具体的には、「認知症の人の権利擁護」「市民に認知症の理解を広げる認知症サポーター養成事業及びステップアップ講座の開催」「認知症になることの予防に関する取組み」「認知症の人が利用する認知症グループホームなどの介護保険サービスの整備」「認知症の人の介護者の支援」「認知症初期集中支援チームによる訪問支援」「認知症カフェの開設」などを行っております
②総合的な認知症施策の推進について、第8期計画内での取り組み計画は?
→中間とりまとめでは、軽度認知症の人の生活に役立つ知識に関する冊子の作成や認知症カフェの継続、拡充などとしております。
→軽度認知症の人の生活に役立つ知識に関する冊子の内容につきましては、今後、関係機関等と検討してまいります。また、認知症となった本人の意見を発信できる場の設置につきましては、市では認知症カフェがその役割を担っており、継続、拡充することとしています。
<解説>
 認知症の施策については、私も何度か質問をしてきました。特に2018年12月議会の一般質問で「日本認知症本人ワーキンググループ」の活動を紹介して、このグループと東京都健康長寿医療センターが共同して作成した「本人にとってのよりよい暮らしガイド」の活用や、認知症になった当事者の方が様々な形で情報を発信したりすること、当事者の声を施策に反映させていく事を求めました。
 第8期計画の中でこういった情報発信や冊子の作成が盛り込まれたのは、大変重要な事だと思います。冊子の作成にあたっては、すでに出されている「ガイド」なども参考にしてほしいと提案しました。また、認知症となった本人の意思やアイデアがいかされ、意見を発信できる場を設けることも必要ではないかと、提案しました。
 認知症施策については、認知症になっても本人の意思が尊重され、前向きに暮らしていけるような取り組みが必要だと思います。認知症になったことを隠さないで暮らしていける街をどう作っていくのか。こういった視点で、これからも認知症の課題については取り上げていきたいと思います。

(5)新型コロナ感染症の影響について
①新型コロナ感染症が介護事業に与えた影響とその評価は?
→各介護事業所において、様々な工夫のもと、感染症対策を講じながら必要なサービス提供の維持継続に取り組まれていますが、高齢者には基礎疾患を抱える割合も高く、重症化するリスクが高い特性がある中で、介護事業所における感染も発生しています。
②感染症対策について、第8期計画内での取り組み計画は?
→中間とりまとめでは、感染症の予防の周知啓発や、感染症発生時の対応策を事前に把握することにより、事業所が感染拡大の防止策を講じることを支援することとしています。
→新型コロナウイルス感染症が発生する中で、介護事業所の収支や事業継続への影響は一定程度あるものと認識しています。介護事業所に対し感染症対策の強化や必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築するための計画等の策定などが、令和3年度の介護報酬改定に位置づけられております。また、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として全サービスの基本報酬に半年間0.1%上乗せするなどの改定が予定されています。
<解説>
 新型コロナの対応では、感染も発生したが必要なサービスを提供していく事が重要だということです。しかし新型コロナ禍が続く中で、これからも介護事業所の収支や事業継続に大きな影響が出てきます。そういった影響を受ける中で介護事業所が事業を継続できるように市としても支援や援助が必要ではないでしょうか。
 この間、市議会として医療を守る、特に重要な役割を果たしている公立病院である稲城市立病院の経営を守るんだと一致して要求してきました。また、地域の医療機関に対しても支援をしてきました。それでは、介護施設はどうなのか。地域の高齢者の生活を支える介護事業所に対しても、支援をしていく事が求められるのではないでしょうか。これからも更なる対応を求めます。

(6)「公助」の介護保険制度に向けて
①介護保険事業は「公助」の制度としていくことが求められると考えるが認識は?
→介護保険につきましては、介護保険法第1条に位置付けられておりますとおり、国民の共同連帯の理念に基づく制度であり、介護が必要になった高齢者を社会全体で支える共助の制度であると認識しています。
 <解説>
 第8期計画の中では、しばしば「自助」と「互助」と「共助」が強調されていますが、「公助」という言葉が一度もでてきません。第7期計画の時も公助という言葉は一度も使っていないので、そこは徹底をされています。
 介護保険が開始されて20年経ちましたが、高齢者の課題を共助の保険システムだけで解決していくことはできるのでしょうか。「助け合いです」「保険制度です」「共助の制度です」と言われ続けてきましたが、それがだんだん厳しくなってきているのではないでしょうか。
 介護認定を受けている人もいない人も、要介護度の高い人も低い人も、その人らしく生活していくための権利が守られ、暮らしを支えていく、そういったまさしく公助の制度としての介護保険が必要になっているのではないでしょうか。
 これからも「公助の制度」こそこれから必要になってくるという立場から、第8期稲城市介護保険事業計画をより良い計画にしていくために、様々な形で現場の声も聞きながら、議会でも取り上げていきます。
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