SSブログ

稲城市3月市議会一般質問報告3~飼い主のいない猫対策について~ [市議会]

一般質問の報告の3回目は、飼い主のいない猫対策についてです。

3.「飼い主のいない猫」と地域が共生するまちづくりについて
(1)国や都の動向について
①「動物の愛護及び管理に関する法律」の近年の改正状況や内容について聞きます。
→平成24年に改正され、動物が命を終えるまで適切に使用する「終生飼養」の責務が明記されたことや、猫をはじめとする愛度動物の殺傷や虐待等について罰則が強化されたことなどです。
→野良猫は、同法44条に規定されている愛護動物に含まれます。
②「東京都動物愛護管理推進計画(ハルスプラン)」の策定の経緯や位置づけについて聞きます。
→動物愛護法や東京都動物愛護条例に基づく計画であり、「人と動物との調和のとれた共生社会」の実現をめざし策定されたものです。
→同計画の「施策―3地域の飼い主のいない猫対策の拡充」の中の「(2)飼い主のいない猫対策の一層の推進」で掲げられている3つの項目は以下の通りです。
1.飼い主のいない猫対策が地域での対立を招く事を防止することなどを定めた「飼い主のいない猫対策の普及啓発」
2.飼い主のいない猫対策が猫の引き取り数減少に貢献していることもあり、その地域での推進などを定めた「地域における飼い主のいない猫対策の推進」
3.動物病院や動物愛護団体と連携する区市町村への支援の検討などを定めた「区市町村と動物愛護ボランティア等との連携の推進」
<解説>
 野犬対策が進む中で、「飼い主のいない猫」、いわゆるノラ猫への対応が注目をされるようになっています。実はノラ猫にとってこれまでの最大の天敵は、野良犬でした。野良犬が多かった時期は猫はそれほど目立ちませんでしたが、狂犬病予防の観点から飼い主の登録や保護などの対策が進み野良犬がほとんどいなくなると、天敵らしい天敵がいなくなっています。
 飼い主のいない猫のほとんどは元飼い猫だったのが、飼い主が飼養を放棄して屋外へと離してしまったり、避妊や去勢をしないで飼っていたために頭数が増えて管理できなくなったためにやはり屋外へ出てしまった猫たちが、子どもを産んで増えていったものです。飼い主のモラル向上と同時に、すでに存在している「飼い主のいない猫」と地域が共生をしていくまちづくりの進展を求めるその立場から質問しました。
 動物愛護法は、2012年に改正がされてちょうど今年に更なる見直しがされる予定です。前回の見直しでは愛護動物に対する虐待などへの罰則が強化をされたということです。また、保健所などによる動物の引き取り義務が制限をされたことも重要です。かつてのように、野良だからといってすぐに捕獲して一定期間を過ぎたら殺処分ということはしないし、できなくなりました。また、飼い主のいない猫も愛護動物に含まれるという事です。当然、そういった猫たちへの殺傷や虐待は明確な法律違反となるわけです。ノラ猫だからといって何をしても良いということでは無くて、動物愛護の精神から対応をしなくてはならないということです。
 また、東京都は動物愛護推進計画の中で、飼い主のいない猫に対する取り組みを示しています。これが都内の各地自治体にとって一つの指針になるわけです。殺処分ゼロについては以前から目標は持っていましたが、小池都知事が選挙の時などの公約に載せるなどしたために政策的にも重視をされるようになってきています。

(2)「飼い主のいない猫」に対する取り組みについて
①「飼い主のいない猫」に対する市の基本的な認識について聞きます。
→もともと飼い猫が捨てられたことで、これ以上増やさないために、飼い主が飼養三原則である「屋内使用の推奨」「不妊去勢手術の実施」「個体標識の装着」を徹底することが需要であると認識しています。
→動物愛護団体等と連携し、「殺処分がなくなること」を目指します。
②「飼い主のいない猫」対策としてこれまで行ってきた取り組みについて聞きます。
→市民から苦情や相談が寄せられた際は、市内のボランティア団体と情報を共有しながら聞き取りや掲示物の設置などの対策を行っています。
→ボランティア団体による活動経験や蓄積したノウハウに基づく取り組み手段などの助言を得ることは、大変重要なものであると認識しています。こういった活動を広く市民に周知する取り組みについては、他自治体の事例を参考にして研究していきます。
<解説>
 飼い主のいない猫への基本的な認識は、これ以上増やさないために、飼い主がしっかりとしてくださいというものです。それでは既にノラ猫状態になった猫たちをどうするのか?ということについて、なかなか思うような答えになりません。私はこの点に課題があるのだと思います。
 飼い主のいない猫に対して担当部署の職員の皆さんは丁寧に対応をしていただいています。ボランティアの人とも協力しながら個別の事案についてしっかり対応されているのですが、それが担当部署の中で留まっていて、市全体の政策的な方針や指針が定まっていないのではないでしょうか。(1)の②で取り上げたハルスプランの「飼い主のいない猫対策」の3つの項目「①飼い主のいない猫対策の普及啓発」「②対策の推進」「③行政とボランティア等とうの連携」を基本に据えるべきだと求めました。
 ボランティア団体の協力は市にとっても大変重要だという事です。稲城には、稲城動物愛の会というボランティア団体があり、日頃より飼い主のいない猫に関わって活動をされています。猫たちに餌やりをしながら、避妊や去勢手術を皆さんが自腹で行ってこれ以上猫が増えないように対策をしたり、保護した猫の譲渡活動なども行っています。自らも自宅で猫を飼うことで、猫の生態などにも詳しい知識を持たれています。こういったボランティア団体の活動をお手本として市民に広く周知するような取り組みも重要ではないかと対応を求めました。
030801.jpg
※我が家の猫も稲城動物愛の会が保護した猫を譲り受けました。

(3)「飼い主のいない猫」に対する餌やりについて
①「飼い主のいない猫」に対する餌やりについて認識を聞きます。
→不適正な餌やりをしないことが、重要であると認識しています。
→不適正な餌やりについては、いつでも食べられるように常時エサを置いておく「置きエサ」や「猫が食べ終わった後の清掃をしない」などです。
②市内における餌やりの状況について聞きます。
→市で把握しているのは、ボランティア団体が餌やりを実施している場所が27か所と聞いています。それ以外の餌やりについては、把握しておりません。
→「不適正な餌やり」は餌やりを是正し、適正な餌やりになるよう啓発を進めていく考えです。
→他自治体の取り組みでは、荒川区における「荒川区良好な生活環境の確保に関する条例」や京都市の「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」などがあり、不適正な餌やりなどによる周辺住民の生活環境に被害が生じる状態などを禁止する施策があります。
<解説>
 餌やりに関する答弁は大変重要なものでした。餌やり全般が問題だということではないということです。「適正な餌やり」と「不適正な餌やり」があって、不適正な餌やりをしない、させないことが重要だという事です。
「不適正な餌やり」の具体的な内容は「置きエサ」や「後片付けをしない」等とのことです。たしかに良くないです。あの辺に猫がいたなあと考えて、魚の切り身なんかをポンと放り投げておく。その後どうなったか確かめたりしないので、食べ散らかしたものがそのまま放置をされてしまうような状況です。猫の餌やりは定時定点で行い、決まった量をあげて無くなったら、そこで終わりにして後片付けをするというのが基本だということです。
「不適正な餌やり」を防止するために、いくつかの自治体ですでに取り組みがされているということです。ただ、この先行事例も試行錯誤がされています。
 12月21日付けの朝日新聞の記事ですが、京都市で野良猫に餌やりをしていた女性たちが男から餌やりをするなと怒鳴られるなどの住民トラブルになり裁判で餌やりを妨害した男の方に損害賠償を命じた。この背景には京都市のこの条例があって、条例で「不適正な餌やりの禁止」を定めたがその定義が分かりにくくて、餌やり禁止だけが独り歩きした。京都市は「餌やりを全面的に禁止したわけではなく、野良猫を減らしたいという思いだった。誤解を解いていきたい」としています。荒川区でも同じような状況があるという事です。
 飼い主のいない猫への餌やりというものを、どう捉えるのかという事です。地域猫活動アドバイザーの石森信雄さんという方がいます。練馬区の現役の職員で、練馬区保健所の動物担当課で飼い主のいない猫対策の制度設計を行った人です。この方は飼い主のいない猫のことは地域社会の課題として捉えようと言っています。すでに何らかの理由で野良猫となってしまった猫がいるけれど、その猫をすべて地域から追い出してしまったら解決になるか?ということです。ある地域から猫をすべて追い出しても、ちりぢりに近隣の地域に移るだけです。しかも放っておけば子どもを産んであっという間に数が増えてしまい、ある瞬間は地域から猫が一掃されるかもしれませんが、気が付けば倍の数になってまた戻ってくるというわけです。
 だからこそ定時定点の適正な餌やりをすることでその地域内の猫の数を把握し、一匹ずつ捕まえて避妊去勢をしてあげる。そうするとそれ以上頭数は増えなくて、自然と数が減っていく事になります。野良猫の寿命は3年~5年程度と言われています。適正管理をすることで状況が把握できて、自然と数が減少し、行政としても猫が増えすぎて殺処分せざる得ないということにならないですむ。これが、いわゆる「地域猫」と言われる活動です。
「地域猫」活動をしている人たちは猫がかわいいからとかかわいそうだからと言った一時的な感傷だけで餌やりをしているのではなく、適正管理をすることで猫が好きな人も嫌いな人も住みやすいような街づくりを願っている人たちなんだと捉えるべきではないでしょうか。

(4)「飼い主のいない猫」に対する今後の課題について
①「飼い主のいない猫」について市民の理解や関心を高める取り組みについて認識を聞きます。
→市としては飼い主が責任ある飼い方をする「終生飼養」の理解を進めていくことが大切であると考えています。
→餌やりについては、適切な餌やりと不適切な餌よりを容易に区別できない点が課題だと認識しています。今後は、不適正な餌やりを是正し、適正な餌やりになるよう啓発を進めていきます。方法としてはチラシや看板など啓発を行っており、合わせて市のホームページでも周知を図っています。
②「飼い主のいない猫」への対応として行政・地域・ボランティアが共同して取り組むことへの認識を聞きます。
→飼い主のいない猫と地域が共生していくために、「行政」「地域」「ボランティア」が協力して共に進めていくことが必要であり、引き続き連携していきます。
→市内のボランティア団体の皆さんとは、これまでも話し合いの機会を通じて、課題や対応方法などを共有していきます。今後も、同様に話し合いなどで情報を共有していきます。
0308.jpg
※飼い主のいない猫に関する市のホームページ
<解説>
 先ほど紹介した石森さんは地域猫活動への行政支援の具体例として、次の3つのをあげています。①去勢・不妊手術費用の助成、②自治会などの地域団体との調整、③広報やチラシでの「地域猫活動をお勧めします」という広報の3点です。そして、その中で最も重要なのは①の助成金ではなくて、③の行政広報だと言っています。自治体が「これがわが市の考えです」と広報すれば活動している人は「自分の活動は公共的なものです」と言えるようになる。ということです。
 餌やりについても不適正な餌やりは防止をして、適正な餌やり方法を行ってもらう必要がありますが、市民の中にはそもそもどれが不適正でどれが適正なのかについてまだまだ理解が広がっていないのではないでしょうか。
 ボランティア団体の稲城動物愛の会の方とお話しをすると、餌やりをしている時に近隣の人からクレームを言われたり、嫌がらせのような事を受けることがあるそうです。多くの人は説明をすればわかってくれたりするけれど、時には怖い思いをすることもあったとのことです。市民の中には、適切な方法で行われている餌やりについても「良くない事」だという誤解がまだまだあるのではないでしょうか。
 既に何らかの理由によって飼い主のいない状態となった猫が相当な数で存在をしています。既成市街地だけではなく、ニュータウン地域でも猫たちを見かけます。飼い主に対して啓発を行ってこれ以上の捨て猫を増やさないようにするのは当然ですが、現在地域にいる猫たちを放っておけばその猫がどんどん子どもを産んで増えていくだけです。これまでの対応を超えた取り組みが必要ではないでしょうか。これまで個別事例として担当部署が対応をされてきましたが、地域の課題の一つとして認識して統一的な方針づくりや施策の実施を行うべき時期だと考えます
 一件一件のケースに行政が対応していたら莫大なコストがかかってしまいますし、それをすべてボランティアに丸投げするものではありません。自治会なども含めた各地域の住民の皆さんと一緒に話し合いながら、より良い方法について検討をしていくことをこれかも求めていきます。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。