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稲城市12月市議会一般質問報告2~国民健康保険制度の現状と都道府県化について~ [市議会]

2回目の報告は「国民健康保険制度の現状」と「国民健康保険制度の都道府県化」についてです。
ここも数字を基にした質問を行いましたので、その内容については表にしました。
だいぶ細かい内容になってしまいますが、報告します。

3.国民健康保険制度の現状について
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(1)国民健康保険制度の役割について
①国民健康保険制度の役割について認識を聞きます。
→被保険者の健康の保持増進を図る社会保障制度であり、国民皆保険制度の基礎をなすものです。
→事業運営にあたり国も含めた公的な支出がされており、今後も公的支出は必要であると考えます。
(2)加入者の状況について
①被保険者の年齢構成について聞きます。
→2016年度の被保険者19314人中、40歳未満が5371人(27.8%)、40歳から64歳までが6489人(36.6%)、65歳から74歳までが7454人(38.6%)です。
→被用者保険と比べると、一般的に会社を退職してから国民健康保険へ加入する人が多いことから、65歳から69歳が一番多いことが特徴です。
→東京都平均と比べると、25歳から34歳が少なく、65歳から74歳が多いことが特徴です。
②直近3年間の被保険者の一人当たり所得金額(旧ただし書き所得)について聞きます。
→№1の通りです。
③世帯主の職業構成について聞きます。
→2016年度の世帯主総数13911人中、給与所得者が5874人(42.2%)、営業所得者が1393人(10%)、農業所得者が13人(0.1)、年金等その他所得者が5149人(37%)、所得の無い人が1482人(10.7%)です。
④直近3年間の一人当たり医療費について聞きます。
→№2の通りです。
→被用者保険一般と比べると、国民健康保険の一人当たり医療費は倍以上の額になり医療費水準が高いというのが特徴です。
⑤被保険者の状況をふまえた国民健康保険制度の課題について聞きます。
→年齢構成や医療費水準が高い一方で、所得水準や保険税の収納率が低いことなどの構造的課題があります。この構造的課題の解決として、国の責任として3400億円の追加的な財政支援が行い、今回の制度改革がされたものと考えています。
<解説>
 2018年度から国民健康保険制度が大きく変わります。なぜ制度が変わり、どのように変わっていくのかを明らかにするために、まず現在の制度の状況について基本のところを確認していきました。国保制度は社会保障の制度であり、国民皆保険制度の基礎をなすものであるということです。そして、そのためには今後も公的な支出は必要であるという事です。あたりまえのことですが、国保制度については加入者や利用者の負担だけで制度運営しているのではなく、必要な税金の投入は今後も行われるべきであるということです。
 かつては国保制度の加入者は自営業者や農業者の人が多いと言われていましたが、今では働いていて給与を貰っている人や年金暮らしの人がほとんどを占めています。また、所得の全くない人も1割いるという状況です。また、一人当たり医療費は約32万円の医療費という事で、当然ながら高齢者が多いので被用者保険に比べて医療費は高くなってくるわけです。
 退職者や低賃金労働者が加入者の多くを占めていて、必然的に医療費も高くなりやすい。これは制度そのものの課題であって、これを加入者個人だけの努力や責任では解決できないわけです。当然といえば当然の話なのですが、ここをあいまいにしたり、ぼやかしたりして、最後は受益者負担という名目で保険料の値上げで解決を図るということは、皆保険制度の基礎であるという基本的な位置づけからも行うべきではないと求めました。

(3)財政状況について
①直近3年間の歳入・歳出・実質収支について聞きます。
→№3~№5の通りです。
→この間の財政運営は、被保険者の減少に伴い税収入も減少傾向にあるものの、被保険者の高齢化により保険給付の費用が年々増加傾向にあります。保険税の収納率や健康診断の受診率の向上等による経営努力による交付金が増額されるように努力して、保険税率の改定をすることなく運営してきました。
②直近3年間の財政運営基金の推移について聞きます。
→№6の通りです。
→基金は、保険給付その他財源の不足が生じたときに使用するために設置しています。
③直近3年間の法定外一般会計繰入の金額と歳入に占める割合について聞きます。
→№7と№8の通りです。
→東京都平均や26市平均と比べると稲城市の歳入割合は低くなっています。
→繰り入れをしなかった場合においては国保の制度や財政の維持が困難となってしまうことから、一般会計から多額の税金を投入して国保財政を維持している状況です。
④平成28年度決算「国庫補助金・財政調整交付金」の内訳について聞きます。
→交付金1億1382万円のうち、普通調整交付金が4959万円、特別調整交付金の経営努力分が5253万円、保険者努力支援制度の前倒し分が792万円、その他377万円となっています。
⑤「保険者努力支援制度(前倒し(平成28年度分))の内容について聞きます。
→保険税の収納率向上、糖尿病等の重症化予防、後発医薬品の使用促進、特定健診受診率の向上などの評価指標として設定された取り組みの重要度に応じて150億円が配分されたものです。
→稲城市の取り組みは、健診の受診率の向上などで60点のうち15点となりました。がん検診及び歯周病疾患検診受診率向上として20点のうち10点となりました。後発医薬品促進の取り組みで30点のうち15点となりました。保険税の収納率の向上の取り組みで40点のうち40点となりました。その他の取り組みも合わせて総配点275点のうち106点となり、交付額が792万円となりました。
(4)保険料(税)について
①保険料(税)の賦課方式について聞きます。
→基礎課税額、後期高齢者支援金等課税額、介護納付金課税額として、それぞれ所得割額と均等割額の合計額で賦課しています。
→市町村平均との比較では、医療分についての応益割合が稲城市は4.1%低いことから、所得の高い人の保険税が高く、所得の低い人の保険税は低く抑えられている特徴となっています。
②直近3年間の1人当たり保険料(税)について聞きます。
→№9の通りです。
→被用者保険一般の保険料については事業主と折半する仕組みとなっていることから、国民健康保険の方が被用者保険より負担が重い特徴となっています。
③直近3年間の収納率について聞きます。
→№10と№11の通りです。
→東京都平均や26市平均と比べると、稲城市の方が高くなっています。
→これまで様々な徴収努力を重ね、収納率の向上を図ってきました。今後も引き続きこうした取り組みを推進していきますので、制度改正による影響はないと考えています。
<解説>
 国保制度の財政収支については一定の黒字が確保をされていますが、その中には法や条例で定められている部分の枠外で一般財源から繰り入れているお金約6億5千万円が含まれていて、歳入の約6%~7%を占めています。東京都の資料では2015年度の繰入金の歳入割合の都平均は7.1%、26市平均は8.4%となっています。2015年度でいえば都平均も市平均も下回っています。ちなみに全国平均は約10%です。
 繰入金の内訳について市は明言しませんでしたが、これも都の資料にちゃんと掲載されています。2015年度でいえば、「保険料(税)の負担を軽減するため」に約5億円、「健康づくりなどの保健事業に使うため」に約4600万円に使われています。つまり、繰入金のほとんどが「保険料(税)の軽減」のために使われているのです。だから、もしこれらの繰り入れが無かったら保険料(税)の軽減がなくなり、負担額にすべて跳ね返ってくるというのが実態ではないでしょうか。
 市の努力と加入者の皆さんの協力もあって、保険料(税)の収納率は95%を超えています。市は保険料(税)の増減は収納率に影響はないと答弁しましたが、金額が増えれば払えない世帯だって出てしまいます。保険料(税)は払える中身にしていく事が必要だと求めました。


4.国民健康保険制度の都道府県化について
(1)都道府県化について
①国民健康保険制度の都道府県化の意義について聞きます。
→都道府県が市区町村と共に保険者となり、財政運営の責任主体として国民健康保険の運営の中心的な役割を担うことにより、制度の安定化が図られるものです。
→都道府県は安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等の国保の中心的な役割を担い、市区町村は地域住民との身近な関係の中で引き続き資格の管理や国民健康保険料(税)の賦課・徴収や保険給付の決定等を行うものです。
②都道府県化による主な変更点について聞きます。
→都道府県は市区町村毎の事業納付金の額を決定し、各市区町村の保険給付に必要な費用全額を市区町村に代わって支払う仕組みとなります。
→市は東京都により示される標準保険税率を参考に、稲城市国民健康保険税条例に基づき、稲城市において保険税の決定や賦課・徴収を行っていきます。
③「東京都国民健康保険運営方針」の法的位置づけについて聞きます。
→改正後の国民健康保険法第82条の2の規定に基づいて作成されます。
→市区町村の対応については同法で「都道府県国民健康保険運営方針を踏まえた国民健康保険の事務の実施に努めるものとする」となっています。
<解説>
 2018年度より国民健康保険制度が都道府県単位による運営に変更されます。どの部分が変更され、市民や被保険者にどのような影響を及ぼすのかについて聞きました。
 「東京都国民健康保険制度運営協議会」が開かれていて、その中で都としての国保運営方針が作られています。この「運営方針」への市町村の対応については、法で規定されているのは「都道府県国保運営方針を踏まえた事務の実施に努める」という点です。必ず守りなさいとは言っていません。標準保険料率などの保険料の取り扱いについては、市町村が独自に考えていく事は認められていて、保険料(税)の決定権や賦課や徴収に関する方針作成は市にあるというを確認しました。

(2)財政運営について
①歳入・歳出項目の現状からの変更点について聞きます。
→歳入科目で「療養給付費等交付金」「前期高齢者交付金」「共同事業交付金」を廃止する予定です。歳出科目では「後期高齢者支援金等」「前期高齢者納付金等」「老人保健拠出金」「介護納付金」を廃止し、新たに「国民健康保険事業費納付金」「財政安定化基金拠出金」を新設する予定です。
②2018年度公費「財政調整交付金」の内容について聞きます。
→財政調整交付金として800億円程度が追加されます。
→財政運営の仕組みが変わることに伴い、一部の自治体で保険税の負担が上昇する可能性があることから、激変緩和の仕組みが設けられています。
③2018年度公費「保険者努力支援制度」の内容について聞きます。
→都道府県と市区町村による医療費の適正化に向けた取り組み等に対して、総額800億円が都道府県に交付され、そのうち市区町村に対して300億円程度が交付されます。
→稲城市においてはこれまでも医療費の適正化に向けた取り組みなどを行っており、今後についても保険者努力支援制度の評価指標を参考に医療費の適正化について努めていきます。
<解説>
 財政運営では、交付金の中に「保険者努力支援制度」というのが盛り込まれていてこれについてはすでに前倒しで取り組まれているものもあり、稲城市は一定の実績をあげています。
 医療費の適正化というと、いかにも上からの押し付けでという感じになってしまいます。実態としてそういう側面もあるわけですが、中身を見ると、ちゃんと健康診断を受けましょう、糖尿病などが重症化しないようにしましょう、健診結果をわかりやすく提供しましょう、保険料が滞納しそうな人には特別な事情を確認したり相談の機会を設けたりしましょう等々、一定まっとうな事も述べられています。重要なのは、交付金を貰うために無理やりこういった事をするのではなく、市民や加入者の健康を守り、結果として医療費が削減され、そして交付金も配分されるという良い意味での努力がされることが重要ではないでしょうか。

(3)「標準保険料率」について
①「標準保険料率」の種類とその内容について聞きます。
→「標準保険料率」は2種類あり、1つは全国統一算定基準による「都道府県標準保険料率」で、もう1つは都道府県内の統一算定基準による「市区町村標準保険料率」です。
→東京都国民健康保険運営協議会で示された試算結果については以下の通りです。
→「東京都平均の標準保険料率で計算した稲城市の新たな一人当たりの金額」は14万5019円で、「東京都平均で計算した稲城市の保険料(税)で法定外繰入を行った実際の金額」は11万2881円で、差額は3万2138円で128%の増額となります。
②「標準保険料率」の法的位置づけについて聞きます。
→改正後の国民健康保険法内2条の2において、都道府県は市区町村標準保険料率を算定し、市区町村に通知するとともに遅滞なく公表するよう規定されています。
→市区町村の対応についての規定はありません。法令上の根拠があるものではなく、参考として示されているものです。
③保険料の都道府県内一本化について認識を聞きます。
→東京都国民健康保険運営協議会での資料では、「保険料水準を平準化するには、区市町村間の医療費水準や収納率の違いを調整する必要があるが現状では差が大きいため、平準化した場合、医療費水準が低い、又は、収納率が高い区市町村がより多くの納付金を負担することになる。このため、ただちに保険料水準の統一を目指すことは困難である」と述べられています。
<解説>
 東京都が示した標準保険料率で計算をすると、大幅な増額となってしまいます。以下の表は、都が示した標準保険料率に基づいてモデル世帯の年収別の保険料と現在の稲城市の保険料、そしてその差額について、日本共産党都議団と稲城市議団が作成した試算結果です。現在の稲城市の保険料率の計算は低所得の人に手厚い内容になっていますが、これを都の標準保険料率に合わせると低所得の世帯になるほど負担増の伸び率が大きくなり、全体としても1.5倍の負担増となってしまいます。子育て世帯なんて、どの年収区分でも年収の1割以上が国保の保険料です。国民年金と介護保険の保険料と各種税金が加わる。とても払っていけない状況です。前段の収納率の答弁で制度が変わっても影響がないという答えでしたけど、ここまであがってしまうと重大な影響が出てしまうのではないでしょうか。
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 東京都は保険料の都内一本化については「困難である」と認めて、「運営方針の改定等の際に協議、検討していく」と述べています。今回の運営方針は平成33年度、2020年度までの計画になっているので、少なくとも3年間は自治体の判断で保険料を決めていく事ができることになります。そうなると、稲城市としてどうするのかが問われてきます。東京都は保険料率を統一しないと言っているのだから、稲城市の責任で値上げをするのか、値上げしないで据え置くのか、もしくは値下げをするかという判断が行われて、それに対する説明責任が求められるのではないでしょうか

(4)2018年度以降の保険料(税)について
①2018年度保険料(税)の計算方法について聞きます。
→現在、稲城市国民健康保険運営協議会の中で審議をされていますが、計算方法については現行と同じ方法と考えています。
→同協議会で「全国的に、決算補てん目的とした一般会計繰入金を解消・削減していく動きがある」と述べている理由については、平成30年度保険者努力支援制度の都道府県分で「決算補てん等目的の法定外一般会計繰入等の削減」が評価指標の一つとなっていることなどです。
②市民の理解と納得の得られる保険料(税)額としていくことについて認識を聞きます。
→市民の理解と納得の得られる国民健康保険税としていくことについては、稲城市国民健康保険運営協議会で引き続き審議をお願いしていきます。
→市民や国民健康保険被保険者による健康づくり活動の実施については、地域の中で健康に暮らせることは市としても良い取り組みと考えています。
→国民健康保険の被保険者でない市民の負担などによる補てんを行ってきている中で、被保険者と市民にご理解をいただける保険税の在り方について、運営協議会で審議をしていただきます。
<解説>
 新しい保険料の計算は、現状と同じ賦課割合で行うという事です。それでは、法定外繰入金をどうするのかということです。稲城市国保運営協議会においては「全国的には、決算補てん目的とした一般会計繰入金を解消・削減していく動きがある」としていて、法定外繰入金の削減について検討するとしています。ここで重要なのは、「解消・削減」を求められている主体が区市町村ではなく都道府県だということです。保健所努力支援制度の評価指標の中身を見ると、都道府県に対して「都道府県内の市町村が決算補てん等目的の法定外一般会計繰入等を行っていない場合、または、都道府県が国保運営方針に基づき、決算補てん等目的の法定外一般会計繰入等を行っている市町村ごとに、削減の目標年次を定めた個別の計画を作成している場合」となっています。
 都道府県が繰り入れを止めさせたいと考えるのなら、市町村に対してそれ相応の計画を作らせるように求めています。市町村が、もっといえば市民や加入者が納得するような計画を作らないと繰り入れの解消はできないわけです。それでは東京都はどうしようとしているのでしょうか。11月21日の東京都国保運営協議会では「運営方針においては、赤字解消・削減に向けた方向性や取り組みについては記載するが、一律の目標年次を定めることは困難である」と述べています。つまり、具体的な繰り入れの削減や解消の計画は作れないと述べていて、これも2020年度以降の次期計画に先送りしているわけです。法定外の繰り入れはやめられないし、やめてしまったら一気に保険料が増えてしまい、とても皆保険制度の維持なんてできなくなってしまいます。繰り入れ止めろというなら、それに代わる確実な財源をちゃんと示せと言うべきではないでしょうか。
 国保制度については、市民や加入者の皆さんは本当に様々な努力や協力をしてくれています。そういった努力にどう市が応えていくのかということが、問われているのではないでしょうか。今回、制度は変わりますが国も都も保険料をあげろなどという指示は出していません。運営主体である東京都も区市町村の実態に合わせて決めていいと言っています。それならば、今回の制度改定を口実にして値上げをすることはせずに少なくとも保険料は値上げをしないで、現状通り据え置いていくということが最も市民や加入者の理解を得られる内容であると、市の対応を求めました。国民健康保険制度については来年だけでなく、今後も重要な課題となってきます。今後も、「負担能力に応じて払える保険料にしていく」ことを求めていきます。

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