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稲城市3月議会一般質問の報告③~多摩火工廠と大丸都有地~ [市議会]

3回目の報告は「多摩火工廠」と「大丸都営跡地」についてです。

3.多摩火工廠跡の調査・保存について
(1)遺跡の調査・保存の基本的認識について
①市内の遺跡や埋蔵文化財の調査や保存の基本方針について聞きます。
→市内の遺跡については、現在161か所が埋蔵文化財包蔵地に登録されています。これらの調査は保存については文化財保護法に基づいて対応しており、必要があれば東京都の指導ももらっています。
②遺跡の調査や保存に係わる現在の人的体制について聞きます。
→生涯学習会において正規職員1人と再任用職員1人で担当しております。2人と学芸員資格を有しています。
③国や東京都が遺跡や埋蔵文化財の調査・保存に関してどのような基準を設けているのかを聞きます。
→国の文化財保護法で、歴史や文化を理解するために欠くことができないものであるという理念のもと、調査保存等について基本的な基準を定めています。さらに、東京都では実務的な事務処理要綱等を整備しています。
<解説>
 多摩火工廠については3回目の質問となります。市立病院の横にある広大な敷地は米軍横田基地所有のレクリエーションのための施設「多摩サービス補助施設」として、日本の土地、稲城市の土地でありながら立入すら厳しく制限をされている。この中には、旧日本軍が作った火薬製造工場、通称多摩火工廠の様々な遺跡が残っているわけです。この間、多摩火工廠跡の調査や教育現場での活用を求めてきました。改めて、歴史的な遺跡の詳細な調査と学術的な研究の実施を求める立場から質問しました。
 現在、市には文化財保護に携わる職員が2人配置されています。かつては1人でほぼ全て担当されていたと聞いていますので、そのころに比べると若干の補強はされていますが市内160カ所を超える埋蔵文化財やその他の様々な文化財の調査や保護を行っていく事を考えると、2人だけで本当に良いのかということが問われていくのではないでしょうか。

(2)多摩火工廠跡の調査状況について
①多摩火工廠跡についてこれまで実施された調査について回数や調査内容を聞きます。
→市史編さん事業では、15回ほど調査して、敷地内の動植物・地質の状況、敷地内に現存する建造物の調査を実施しています。文化財保護事業では、火工廠本館建物の建築調査を6回、工場建物等の現況調査を数回実施しております。
→市史編さん事業の調査は、昭和61年度から平成8年度にかけて実施しています。文化財保護事業の調査は、平成10年度から平成18年度にかけて実施しています。
②調査に基づいて作成された多摩火工廠跡に関する資料の種類や内容について聞きます。
→火工廠全体の歴史について記述した「稲城市史下巻」を平成3年に、工場での生活と建物配置について記述した「稲城市史研究第五号」を平成6年に、火工廠内の建造物の調査報告である「稲城市史研究第六号」を平成9年、同じく「稲城市文化財研究紀要第3号」を平成12年に作成しています。
<解説>
 市史編さんに関連して火工廠全体を調査したのは平成8年、21年前が最後。建物関係は平成18年で、11年前が最後になっています。少なくとも10年以上にわたって、公式の調査がまったく行われていないということです。
 また、資料の作成も最も新しい文化財研究紀要第3号が平成12年で、17年も経過をしていることがわかります。
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※多摩火工廠について作成された資料

(3)多摩火工廠跡の詳細な調査と継続的な保存について
①多摩火工廠跡について学術的考察に堪えうる調査研究の実施と、それに基づいた詳細な資料の作成をすべきと考えるが認識を聞きます。
→すでに学術的な調査を実施し、この調査に基づいた資料も発行しており、学術的な考察に堪えうるものと考えていますので、現時点では調査の実施や資料の作成は考えておりません。
→建物配置図は平成3年に作成し平成8年に1回更新しています。また、詳細な平面図で記された建物は火工廠の本館建物1棟のみです。
②多摩火工廠跡について定期的な調査活動を行うべきと考えるが認識を聞きます。
→すでに学術的な調査を実施して、関係する資料も発行していることから、現時点では定期的な調査活動を実施する予定はありません。
→横田基地環境事務所が実施している埋蔵文化財と自然資源調査については、横田基地から資料をもらっていませんので把握をしていません。
③多摩火工廠跡の建物等について後世に保存するための取り組みをすべきと考えるが認識を聞きます。
→多摩火工廠跡については、市が直接関わることができない米軍施設であることから、現時点では建物保存のために取り組みを実施する予定はありません。
→市が直接関わることができない施設であることから、東日本大震災発生以降の解体や処分されている建物について確認はしていません。
<解説>
 学術的考察に堪えうる調査は行い、それに伴う資料も作られているのだから、これ以上の調査は必要ないということです。本来求められる水準からするとまだまだ不十分と言わざるを得ないのではないでしょうか。
 例えば、建物配置図です。平成8年に更新さていますが、実際にはこの配置図の中で既にない建物が出てきています。木造の建物を中心に安全性の観点から取り壊しをされたりしているのですが、その実態がまったく分かりません。当時の配置図に合わせながら現在残っている建物がどうなのか、改めて配置図を作成することが必要ではないでしょうか。
 それは、建物の調査についても同じです。文化財研究紀要第3号には、火工廠の本部が置かれていた本館建物の詳細な図面が掲載をされていますが、施設内には様々な建物が点在しています。市史研究では「横穴式の建造物」となっているものについて、実際にどんな使われ方をしたのか、山肌を切り崩して地形に合わせた独特の造り方をしているけれど建物の違いで使い方に違いはあるのか、大きさに何らかの共通性はあるのか、等々明らかにしなくてはならないことはまだあるのではないでしょうか。エレベーターの縦坑についても、それぞれ測量をして違いについて考察もしなくてなりません。メイン通りには土塁がありますがこれは当時の日本軍が作ったもので、道路のコンクリートは戦後にGHQが舗装をした物だという事です。こういったひとつひとつの特徴について、建築学的な側面も含めて調査・研究をしていく事は本当に重要ではないでしょうか。
 今回、多摩火工廠の資料を集める中で、とても興味深い資料を見つけました。米軍の第374施設中隊環境事務所、これは横田基地を管理している部隊で付属施設であるサービス補助施設も管理をしているのですが、この事務所が作っているサービス補助施設の説明パンフレットの最後に次のように書いてあります。「横田基地環境事務所の一環として、埋蔵文化財および自然資源調査並びに保護活動も行っています。埋蔵文化財の調査は1997年実施され、もっとも古いもので縄文時代前期の土器を確認しています。また自然資源の調査は1999年から生物多様性調査が実施され、鳥類61種、哺乳類13種、昆虫1027種、両生類11種、魚類2種、そして植物は803種類が確認されています。そのうち国指定の絶滅危惧種は11種、都指定のものは71種を数えます」となっています。あの施設の中に縄文時代前期の土器があったという事です。こういった重要な事実についても、把握をしていないということです。こういうことが行われていたのも知らされていなかったのではないでしょうか。
 調査や保存について市が直接かかわることができないということです。すべてを稲城市単独で行うのではなく、必要によっては横田基地の人と一緒に共同調査やってもいいと思います。実際に横田基地の方でも定期的な調査をやっているわけです。旧日本軍が作った工場や建物があそこまできれいに残っている場所は本当に少ない。戦争遺産としてもそうですし、建築学的な技術資料としても極めて価値は高いのではないでしょうか。多摩市などでも遺跡の調査や保存を求める声が高まっていると聞いています。稲城市と多摩市が力を合わせながら、必要によっては東京都の協力も得ながら本格的な調査研究を行っていく事を求めました。
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※横田基地環境事務所が作成したパンフレット


4.大丸都営アパート跡地の福祉活用について
(1)東京都の「待機児童解消に向けた緊急対策」について
①東京都が平成28年9月9日に発表した「待機児童解消に向けた緊急対策」の内容について聞きます。
→第1の柱として「保育所等の整備促進」として「都有地の活用促進」「民有地や空家等の活用促進」などがあり、第2の柱として「人材の確保・定着の支援」として「宿舎借り上げ支援の拡大」「子育て支援員を増員」があり、第3の柱として「利用者支援の充実」として「認可外保育施設の利用者負担を軽減」などが対策としてあります。
→第2の柱の活用については、「子育て支援員を増員」については研修活用の情報提供について努めています。「宿舎借り上げ支援の拡大」については現時点では活用していません。
②平成28年9月1日現在で情報提供された市内の都有地について聞きます。
→押立1701-3の224.50㎡の土地と、押立1703-1の307.43㎡の土地の2カ所となっています。この土地については面積や安全性の面から、保育所用地として適さないと考えています。
③平成29年2月1日現在で情報提供された市内の都有地について聞きます。
→稲城市が要望した結果、大丸593-2の約2500㎡の土地が追加をされました。
④これらの都有地が東京都の待機児童解消対策の中でどのように位置づけされているのかについて聞きます。
→「保育所等の整備促進のために、市区町村への貸付けの可能性があり、東京都として現段階で具体的な活用や処分が決まっていない土地」と位置付けられています。
<解説>
 これまでほぼ毎議会のたびに求めてきた大丸都営アパート跡地の福祉活用について、前回の議会で認可保育園の新設を行うという大きな前進が示されました。市民の声に基づいた保育園の新設が確実に実施され、さらに多くの人が集える福祉コミュニティづくりを求める立場から質問しました。
 今回の計画は、東京都の「待機児童解消に向けた緊急対策」の中の「都有地の活用推進」を実際に活用していくことになります。東京都の「情報提供リスト」の中でも、具体的に保育所をつくるために使うことができる土地として掲載がされています。この土地をどのように使っていくのかが問われています。
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※都が区市町村に情報提供した都有地一覧のデータ先


(2)これまでの市の取り組みについて
①都有地を活用した保育園の開設について、これまでの東京都への働きかけの経過を聞きます。
→これまで、東京都の大丸都営アパート建て替え計画に関する意見・要望についての調査に対して、福祉施設などへの活用を要望しています。その後も、要請を続けてきました。
②都有地を活用した保育園の開設にあたって、東京都に提示をした内容を聞きます。
→都有地の活用で認可保育所を設置して、市内の保育の定員枠を拡大することにより待機児童の解消を図ることを東京都に提示しています。
→「稲城市立第四保育園と社会福祉法人東保育会運営の稲城市立第六保育園を合併し、民設民営の300人規模の保育園を2020年に開設する」ことについては、東京都と土地活用に向けた事務レベルでの意見交換の中で触れたもののひとつであり、正式な計画として提示したものではありません。
→都内26市の中での300人規模の認可保育園は、平成28年5月現在で2園です。
<解説>
 大丸都営跡地の都有地活用については、市としても東京都に要請をしてきました。それに伴い、2016年11月11日に東京都から「『都有地活用による地域の福祉インフラ整備』に関する意向調査」が行われています。これを受けて、11月25日に市から「認可保育所として使いたい」「2018年度に公募して、2020年4月の開設予定」にしたいという回答がされているわけです。
 認可保育所の設置について、日本共産党市議団は日本共産党都議団とともに2016年12月に東京都に対して申し入れと懇談を行ってきました。「1.当該都有地の認可保育所としての利用について、早急な実施ができるようにしてください。」「2.当該都有地について保育施設に加えて、介護施設や障害者施設などの複合的な福祉利用ができるようにしてください。」という2点についての要望書も提出してきました。
 その懇談の中で、東京都の担当者からはかなり具体的な中身が話されています。
「稲城市からは以前から要望をもらっていた。東京都としては積極的に都有地を活用してほしいし、なるべくスピーディーに進めたいと考えている。」
「具体的な計画として稲城市からは、第4保育園と第6保育園を合併して300人規模の民営の保育園を作りたいと提案を受けている。」
「2018年に公募をして、2020年開園を目指しているようだが、なるべく早く手続きを進められるようにしたい。」
ということでした。
 この計画について、市は事務レベルでの意見交換で正式な計画として提示をされたものではないということです。しかし、一つの案として話しをしているわけです。そうでなければ、これだけ具体的な内容にはなりません。実際に、この一般質問の前日の代表質問でこの件に関する市長の答弁はわざわざ第四保育園と第六保育園にふれて含みのあるような言い方をしています。前日の答弁を聞いていたら、とてもただの事務レベルでの意見交換だけとは思えません。
 一般的には100人程度が小規模、200人程度が中規模、300人以上になるとマンモス園だと言われているそうです。市内の第6小学校が児童数283人、向陽台小学校が351人、300人の保育園というとこういった規模になってくるわけです。この間、保育関係者の方にこの話しをしたら「300人規模なんて、とてもありえない」「普通では考えられない」という意見でした。しかも、都内26市の中で500園以上の認可保育園の中で、300人規模はたった2園のみだということです。
 日本共産党都議団は今、「待機児解消にむけ、保育の量・質の抜本的拡充を求める提言」を出しています。その中でも、「量を増やすだけでなく、子どもの発達を保証できる質を備えた保育園整備を進めるべきである」ことを求めています。本来であれば、事務レベルの意見交換であったとしてもこのような案は出すべきではないと求めました。
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※大丸都有地周辺の地図

(3)総合的な福祉活用について
①高齢者、障がい者、児童等への総合的な支援の必要性について認識を聞きます。
→高齢者、障害者、児童等への総合的な支援については、その必要性を認識しています。各分野を有機的に結合した稲城市保健福祉総合計画を定めて、市全体として適切な福祉の増進を図っています。
②大丸都営アパート跡地を利用した総合的な福祉コミュニティづくりについて認識を聞きます。
→大丸都営アパート跡地の今後の利用計画については、東京都より現在のところ未定であると聞いています。
→地域における福祉コミュニティの取り組みについては、包括的な相談支援の実施や地域の実情に合ったサービスの提供を行っていく事の他、社会福祉協議会を中心とした地域との連携も必要であると認識しています。
<解説>
 市としても、包括的な相談支援や地域の実情にあったサービスの提供を行っていく事は必要であると認識しています。
 地域の実情という意味では、大丸都営アパート跡地はとても条件に恵まれています。1万㎡を超える土地があり、そのうちの2500㎡を保育園で使い、残りの使用用途は未定です。近隣に大きな団地やマンションがあり、小中学校もある。高齢者だけではなく子育て世代もたくさん住んでいます。
 この場所に高齢者福祉、児童福祉、障害者福祉などの福祉サービスの拠点を設置して一大福祉コミュニティをつくることで、保健福祉総合計画で述べられている「すべての人がいきいきと自立した生活を送る福祉社会」「ともに生き、ともにつくるまちづくり」を実現していくことができるのではないでしょうか。その第一歩として、まずは保育園を作っていくことです。ただし、その保育園は詰め込み型のマンモス保育園ではなく、安心で安全な子どもたちの育成ができる質の高い保育園にしていくことが重要であると求めました。この大丸都営跡地の福祉利用については、これからも議会で取り上げていきます。

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